彷徨える河 (2015):映画短評
彷徨える河 (2015)この熱帯雨林は寒い
凍てつく熱帯雨林。そこは奇妙な植物が鬱蒼と繁る熱帯の形だが、温度は失われている。アマゾン河を小舟で遡ると、次第に異世界が姿を現わしてくる。それを映し出すモノクロ映像は、黒の部分の密度が高い。呪術と共に生きるかつての先住民の姿形は美しく、その美の基準は他文化の基準とは異なっている。その異世界の美にただ圧倒される。
だが本作は、よくある異邦人の目から見た異文化映画ではない。視点は異邦人ではなく、この地で生きてきた先住民のもの。彼が現在、数十年前と同じ場所を旅するという設定で、現在の旅と数十年前の旅、2つの異なる旅が並列的に描かれて重なっていく。そして、世界も彼も別のものに変貌している。
この短評にはネタバレを含んでいます