ミルピエ ~パリ・オペラ座に挑んだ男~ (2015):映画短評
ミルピエ ~パリ・オペラ座に挑んだ男~ (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
ナタポー夫、伝統と戦う
2016年2月、
『ブラック・スワン』の振付も担当したバンジャマン・ミルピエはオペラ座の芸術監督を辞任した。
就任から約1年半。その格闘を本作がつぶさに捉えていた。
端的に言えば異端児の革新が、バレエ団の軋轢を生んだのだろう。
だが彼が放つ言動は、バレエ界全体の問題を指摘しているようで興味深い。
その一つが、バレエ一筋で成長してきた人たちの集団であるという閉鎖的な環境。
そして白人主義。
オペラ座での黒人ハーフダンサーの主演起用は、彼が初だという。
起こす新風が魅力的に映るゆえ、辞任は残念。
だが彼の変革は確実にオペラ座の歴史の1ページを刻み、本作はそれを追った貴重な記録となった。
変化と革新にはプロセスも重要
クラシックバレエの殿堂、パリ国立オペラの芸術監督として、史上最年少で、しかも外部から抜擢された振付師バンジャマン・ミルピエ。その彼が手掛けるオリジナル新作舞台が完成するまでの40日間を追ったドキュメンタリーだ。
奇しくも、本作の完成からほどなくしてオペラ座を辞任したミルピエ。その理由がなんとなく見えてくるところも、皮肉と言えば皮肉であるものの、本作の隠れた面白さと言えるかもしれない。
300年以上に渡って大勢の人々が受け継いできた伝統を頭ごなしに否定する彼の言動は、その多くが確かに真っ当な正論ではあるにせよ、強い抵抗に遭うことは当然。変化や革新は必要だが、同時にプロセスも重要なんだよね。