エルネスト (2017):映画短評
エルネスト (2017)ライター2人の平均評価: 3.5
革命に散った若者の生き様が問う戦後日本の在り方
日本の広島を訪問するチェ・ゲバラの姿で幕を開ける本作。原爆ドームや資料館を巡った彼の「君たちはアメリカにこんな酷い目に遭わされて、なぜ怒らないんだ?」という言葉が、60年近くの時を経て我々の胸に重く響く。
そんなゲバラに留学先のキューバで強く感化され、母国ボリビアで革命に身を投じて散った日系人の若者の姿を描くわけだが、そこにはいまだアメリカ追従を続ける現代日本へ対する疑問も少なからず投影される。
全編スペイン語のセリフに挑んだオダギリジョーの熱演も素晴らしい。ただ、どこまでも折り目だたしい阪本監督の演出は、それゆえに映画的な面白さやカタルシスにいまひとつ欠けることは否めない。
正義を求めた青年フレディの勇気に憧れます
時代のうねりのなかで革命に身を投じた日系ボリビア人青年をオダギリジョーが快演した、丁寧な作りの作品だ。チェ・ゲバラの広島訪問で幕開けするが、メインはフレディの物語だ。反政府活動のせいでキューバで医学を学ぶしかないが、友達も作り、恋もする。物静かで優しい彼はきっと、素晴らしい医師になったはず。なのにキューバ危機が勃発し、軍事訓練中に会ったゲバラの存在が彼の正義を求める情熱に火をつける。弱者を助けたくて医師を目指した点もフレディがゲバラに共鳴した理由のひとつだろうが、社会を変えるには大きな犠牲が伴うと思うと切ない。ノンポリな私ですが、いざという時にフレディのような勇気を持ちたいと思いました。