ジュリエッタ (2016):映画短評
ジュリエッタ (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
老いた母の苦悩に気がシンクロする親子ミステリー
ベルイマン作品のような母娘の葛藤、列車シーンのヒッチコック映画的緊張、激情的な性衝動、原色基調の色使い。アルモドヴァル作品の、あらゆる要素の詰め込みを混沌ととるか作家性ととるかで意見が分かれるところ。
好意的に見られたのはミステリアスな展開に加え、年長者の苦悩のリアリティゆえ。『オール・アバウト・マイ・マザー』の母性をさらに突き詰めたドラマに圧倒された。御年65歳のアルモドヴァルの今の気分がそうさせたのか、“老い”をきちんと視野に入れている点がいい。
老いといえばアルモドヴァル作品の常連ロージー・デ・パルマが家政婦役にふんし、老け顔で登場。そこにいるだけで画面が引き締まる妙演も凄い。
どこか物足りなさの残るアルモドバル最新作
愛する娘はなぜ私の前から姿を消したのか。その答えを探し求めて、ひとり残された母親が自らの半生を振り返る。『ボルベール<帰郷>』以来久しぶりに、アルモドバルが母親の愛情をテーマに描いた作品だ。
愛ゆえの嘘と秘密が招く悲劇、ダグラス・サークを彷彿とさせる映像スタイル、ブニュエルの『欲望のあいまいな対象』にヒントを得た2人1役。アルモドバルらしい作品といえばそうだが、しかし抑制を効かせた端正な演出は過去のエモーショナルなメロドラマとは明らかに一線を画する。
ゆえに、昔からのファンとしては何かが欠けているという物足りなさも否めず。それだけ角が取れて丸くなったということなのかもしれないけれど。