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菊とギロチン (2017):映画短評

菊とギロチン (2017)

2018年7月7日公開 189分

菊とギロチン
(C) 2018 「菊とギロチン」合同製作舎

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

くれい響

強くなれば、変えられる。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

実在したアナーキスト、中濱鐵を演じる東出昌大が『GONIN サーガ』の頃と比べ物にならないくらい色気があり、危うい。そのため、彼が獄中の身となる後半の失速感は否めないが、激動の時代を生き抜くため、激しくぶつかり、舞い、闘う女力士の姿は、宮尾登美子作品の登場人物のように、美しく力強い。つまり、瀬々敬久監督のエネルギッシュな演出は、五社英雄監督にも重なり、189分の長尺を魅せ切る。難しいことは考えず、成長していくヒロインが『この世界の片隅に』のすずさんぽいとか、親方がP・T・バーナムより男気アリといった楽しみ方も一興。今年の日本映画を代表する1本であることに変わらないのだから!

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

抗え!闘え! 暫定的:2018年日本映画ベストワンはこれだ

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

「関東大震災後」の閉塞極まりない、右傾化していく世の中に抗う者の生き様が、「3.11後」を照射して時代と斬り結ぶ。全くもって無政府主義者には見えない東出昌大や寛一郎は一見ミスキャスだが、その不甲斐なさは身体性を欠いた破滅志向の運動家のリアリティを体現し、同様に社会の外で生きるしかない女相撲の一団をより輝かせる。抑圧的な男社会に耐えられない者も被差別者も、土俵上でぶつかり合うことで自らを発散し、人生と格闘する。彼女達が海岸で踊り狂うシーンは、自己を解き放つとともに体制への大いなるアンチテーゼとなって、観念的な男ども以上にアナーキー。2018年ベストテン上位に食い込むべき活力に満ちた日本映画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

瀬々敬久のオッペケペー節

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

全編に瑞々しい初期衝動があふれる自主企画。『友罪』とこれの連打は強烈。大杉栄の影響下にあるギロチン社の若き革命家たちに対し、創作の多い女相撲一座は伊藤野枝の魂を託したものか。アナキズムとフェミニズムが、震災後の日本社会で手を取り合って理想の世界を夢見るお話。女相撲の力士たちに関しては、70年代ロマンポルノ映画のストリッパーってこういう「下層の闘士」的な描かれ方をしていたように思う。

『華の乱』(深作)や『マルクス・エンゲルス』(ペック)との併映を組みたくなる叙事詩的風格。一見「敵」の自警団、在郷軍人分会にも寄り添う姿勢に真骨頂を感じた。瀬々イズムを全部ぶっこんだ三時間強のプロテストソング。

この短評にはネタバレを含んでいます
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