ブラック・ファイル 野心の代償 (2015):映画短評
ブラック・ファイル 野心の代償 (2015)テンプレートの重ね技で魅せる異色ノワール
定番の鋳型をいくつか重ねたら、えらくユニークな佳作に仕上がったという趣。基本はまさに“野心の代償”、「イカロスの翼」変奏の出世主義者のドツボ劇。そこにファム・ファタール物、悪夢的なサスペンスがひねった形で絡む。さらにパチーノ&ホプキンスの「両雄」が『ヒート』ばりの迫力で『パワー・ゲーム』的に青二才役のJ・デュアメルを挟み込む! パチーノが台詞を引用するシェイクスピアの『オセロ』も注意したいモチーフだ。
初監督のS・シモサワはデ・パルマ信者のようで、ギミックを利かせたカメラワーク/画面構成等に充分な影響が通っている。「謎の男」役のイ・ビョンホンもムードの装飾に終わらず、役者の活かし方も上手い。
この短評にはネタバレを含んでいます