ドント・ブリーズ (2016):映画短評
ドント・ブリーズ (2016)ライター4人の平均評価: 4
4D不要の恐怖の館!社会的弱者が生き残りを懸けたバトル
娘を亡くし示談金として得た大金。その金を狙われた盲目の老人と、貧困から抜け出すべく盗みに入る若者たち。プロットは明快だが、善悪に色分けしないキャラクターと緊迫のシチュエーションを生み出す演出が見事で、ホラーさながらの恐怖が醸成されていく。老人役は、『アバター』の屈強な海兵隊大佐役が脳裏に焼き付くスティーヴン・ラング。イラク戦争で失明した老人の聴覚と殺傷能力、そして心の闇が、展開の鍵となる。苛酷な現実を生き延びるため、社会的弱者たちが生死を懸けた恐怖の館。『死霊のはらわた』リメイク版では手腕を発揮できなかったフェデ・アルバレス監督の映像センス全開。すかさず続編製作が決まったのも、むべなるかな。
純然たる恐怖譚の背景には社会派的視点もあり
貧困から抜け出すため窃盗を重ねる若者グループが、一人暮らしで大金を隠し持つ盲目の老人宅へ侵入。ところが、そこには彼らが予想もしなかった絶体絶命の恐怖が待ち構えていた。
注目すべきは、若者側も老人側もそれぞれに複雑な事情を抱えた、言うなれば現代格差社会の哀しい犠牲者という点だろう。そんな弱者同士が大金を巡って殺し合いを繰り広げるという皮肉。どんな結果になっても後味はほろ苦い。
『暗くなるまで待って』や『見えない恐怖』など、盲人が脅威に晒される映画は枚挙にいとまないが、そのまさに逆転の発想と言うべきスリラー演出もなかなかのもの。老人を演じるスティーブン・ラングは『アバター』以来の当たり役だ。
息もできない、とはこういうことだ!
長編デビュー作でリブート版『死霊のはらわた』という、ハードルの高い仕事を請け負ったばかりに過小評価されたフェデ・アルバレス監督だが、ついに実力を発揮! “逆『ホーム・アローン』<逆『暗くなるまで待って』”なありがち設定ながら、全米ヒットも納得なコワ面白い作品に仕上げている。単なる泥棒でなく、幼い妹とデトロイトから逃げるために犯行に及ぶという、社会的背景を絡ませたヒロインの設定。ここに感情移入してしまうなか、対峙する『アバター』のマッチョ大佐ことステファン・ラング演じる“盲目男”や地獄の番犬などのキャラ立ちが見事。今夏『ロスト・バケーション』がツボった人にはオススメな正月映画のダークホースだ!
気づくと、主人公と一緒に息を詰めている
息を潜めてじっとして、その何かが、自分に気づかずに通り過ぎてくれることを祈る。そんな状況は、誰でも悪夢の中で体験したことがあるはず。その誰もが知っている恐怖に特化した設定が巧み。若者3人が強盗のため盲目の男の家に侵入するが、実はその男は驚異的な殺傷力を持つ元兵士で、見つかると命が危ない。ふと気づくと、こちらも登場人物と一緒に息を詰めているという緊迫した場面が続々。それに加えて、封鎖された家からどうやったら脱出出来るのか、登場人物たちは実はどういう人物なのか、という要素が絡んで、緊張が持続する。監督フェデ・アルバレスが、「ドラゴン・タトゥーの女」続編の監督に抜擢されたのも納得だ。