メアリと魔女の花 (2017):映画短評
メアリと魔女の花 (2017)ライター3人の平均評価: 3.7
魅惑的だが危うい魔法なんかに頼らず、自らの力で生きていく覚悟
ジブリ出身者が立ち上げたポノック第1弾。モチーフは魔法。馴染み深い絵柄や動きを随所に見て取り、安心感を抱き嘆息もする。ジブリ的なるものから逃れようとするもがきこそ醍醐味だ。この魔法は科学文明の暴走を思わせ、社会的なメッセージ性を孕んでいるが、ひょんなことから不思議な力を身につけてしまい称揚される平凡な主人公に、米林宏昌監督は自らを重ね合わせてもいる。魔法学校の校長と科学者の存在は、さしずめ鈴木敏夫Pと宮崎駿監督か。魅惑的だが、所詮消えてしまう危うい魔法などに頼らず、自力で生きていく覚悟こそテーマ。ポノックはまだメタモルフォーゼの途上にある。魔法を解くために魔法の力を借りているのだから。
ジブリの呪縛から解放された?
まるで『サスペリア』のエンディングのような導入部に高まったが、本編ではいかにも“『アリエッティ』『マーニー』の監督最新作”な展開が続く。さらに「ハリポタ」「ポケモン」など、随所にヒット要素もみられるが、舞台をイギリスから日本に移した強引な翻訳版だった前2作と異なり、今回は原作通り。そういう意味では、なんだかんだ和テイストにこだわっていたジブリの呪縛から解放された気がしないでもない。原作の持つマザーグース的トラウマ感は薄まったものの、ヒロインが体験するひと晩の夢物語として、しっかりまとまっているところは好感触。あまりに長丁場な展開に嫌気が差したアンチ「ハリポタ」ほど、しっくりくるかもしれない。
ジブリのDNAはこうして受け継がれ、発展していくんですね。
冴えない赤毛の女の子がマジカルな冒険を通して成長するという児童小説らしい展開とはいえ、冒頭のバトル場面はかなりの迫力とスピード感あり。「何が起こっているの?」とわくわくし、すぐに物語に引き込まれる。説明台詞に頼らずに主人公メアリはじめとするキャラの人柄や背景を完結にわからせる脚本も好感度高い。キャラの絵柄や魔法大学のオーガニックな世界観は非常にジブリぽく、見慣れた安心感もある。CGの使い方もとてもナチュラルで、特に森の草木の美しさは感動的。日本が誇るジブリのDNAはこうして受け継がれ、発展していくんだなと実感しました。