羊と鋼の森 (2018):映画短評
羊と鋼の森 (2018)静寂から香り立つ気品
文字で音を表現することに成功した宮下奈都の原作を、音と映像で表現した意欲作。まさに映画的といえるだけに、原作のモノローグをできるだけ排し、観る者の視覚と聴覚に訴えかけ、静寂によって、ただならぬ気品も香り立っていく。『一週間フレンズ』など、ちょい抜けた役をやらせると抜群にハマる山崎賢人もピアノの調律同様、繊細な芝居を魅せ、橋本光二郎監督の演出も『orange オレンジ』と同一人物とは思えないほど冴え渡る。主人公の先輩ら、登場人物が全員善人だったり、この題材で135分の尺というのは腰が引けるかもしれないが、「これはこれでアリ!」という完成された世界観にどっぷり浸れる。そんな良質な人間ドラマである。
この短評にはネタバレを含んでいます