怪盗グルーのミニオン大脱走 (2017):映画短評
怪盗グルーのミニオン大脱走 (2017)ライター3人の平均評価: 3
ワルな魅力の薄れたグルーはちょっと物足りない
今や悪党を卒業して正義の味方となった「元怪盗」のグルーが、愛する家族と共に過去最強の敵に立ち向かう。その敵というのが、落ちぶれた’80年代の元子役バルタザール。全編にマドンナやネーナの80’sポップスが散りばめられ、『ナイトライダー』や『スターウォーズ』のパロディが飛び出し、グルーの双子の兄弟まで登場するなど、とにかくカラフルで賑やかな楽しさは健在だ。
ただ、ストーリー展開は予定調和で意外性に乏しく、グルーのワルな魅力が薄れた分をバルタザールの強烈なキャラがカバーしているものの、それでも前作までのようなドラマの厚みはない。とりあえず、ミニオンズの大ファンとしては満足だけどね!
「サウスパーク」のトレイ・パーカーが意外なところに
意外なところで遭遇したのが、トレイ・パーカー、TVアニメ「サウスパーク」のクリエイター兼声優。同作は97年に放送開始、差別ネタなどアブナいギャグで人気を集めた毒アニメ。そのパーカーが声をあてるのが、今回の悪役バルタザール。80年代の人気子役スターが人気を失ってオヤジになり、自分を忘れた世間に復讐するというイタいキャラ。肩パッドの紫色スーツや髪型、音楽で、80年代を知る観客を思わず苦笑させてくれる。
もちろん、ミニオンたちはいつも通りの楽しさ。今回はミニオンたちが集団で刑務所に収監されて、意外な一面を発揮。また、怪盗グルーが双生児の弟と対面。グルーのお兄さんぶりが見られるのも楽しい。
シリーズとしては限界を感じる
人気シリーズ3作目の本筋は、生き別れになっていたグルーの双子の兄弟との再会劇と、怪盗バルタザール・ブラットとのダイヤ争奪戦。よって、お楽しみの“ミニオン大脱走”は、あくまでもサブ止まり。脚本の弱さが目立ち、クライマックスのバトルも『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』の二番煎じのようで、シリーズの限界を感じずにはいられない。そんななか、元人気子役であるブラットのキャラだけは突出しており、ベタすぎる「ベストヒットUSA」なサントラとともに魅せるアクションは痛快だ。とはいえ、これも『テッド』の偏執狂・ドニーの発展形といえなくもないが、わちゃわちゃ騒ぐミニオンを楽しむだけなら問題なし。