パージ:大統領令 (2016):映画短評
パージ:大統領令 (2016)ライター3人の平均評価: 3.7
大衆を意識した、シリーズ最高の出来栄え!
批評家にけなされながらもヒットしたのは、1年に12時間だけ犯罪が許可される“パージ”という歪んだ制度の魅力だろう。あわよくば私も…なんて思う人も少なくない? そんな狂気的な世界観が定着した第3弾の脚本は今まで以上に素晴らしい出来栄え。特に犯罪許可=差別的な人口抑制というカラクリを強調し、富裕層を民衆の敵と明確化することで観客の共感を呼ぶ設定は昨年の選挙戦を意識したもの。トランプ政権誕生で富裕層が優遇される危機感があるアメリカを反映する部分も多く、まさに今観るべき作品。ヒラリーを彷彿させる反パージ派の大統領候補を守るシークレットサービスとして前作で「赦し」を学んだ警官レオを配置したのも大正解!
極右政権下の米国を描くシリーズ最大の問題作
アメリカでの極端な賛否両論も納得の問題作。保守政権下のアメリカで国民のガス抜きのため、年に一夜だけ凶悪犯罪が合法となる殺戮の宴パージという架空の設定に、現代米国社会の様々な歪みを映し出してきたシリーズだが、今回の第3弾はこれまで以上に政治的なメッセージが明確だ。
愛国心を免罪符に既得権益を守り、パージを通して貧困層という経済的負担の排除を目論む富裕層。彼らに加担する保守系政治家やキリスト教会、保険業界にマスコミ。そんな諸悪の根源を断とうと立ち上がった大統領候補に、政敵の放った刺客の群れが襲いかかる。これを安易な左翼プロパガンダと見るか、痛烈な世相風刺と見るかで評価は二分されるだろう。
12時間殺りたい放題、三回戦!
『バトロワ』系譜のデス・ゲームのネタ映画として始まった『パージ』シリーズだが、2作目で外に飛び出し、今度は(旬だった)大統領選を絡める大胆な試みに出た! シリーズ通し、脚本・監督が『要塞警察』が好きすぎるジェームズ・デモナコという強みもあり、どんな設定でも軸がブレないうえ、前作で復讐の鬼と化したフランク・グリーコ演じる警官がパージ反対派の女性議員のSPとして再登場。タフガイ・キャラの彼と議員との関係性はマックスとフュリオサにも似ているが、1作目のヘタレから革命指導者に登りつめたビショップとの関わり方も見どころ。監督が意図した現実世界とのズレはともかく、シリーズとしての勢いを感じさせる。