地獄愛 (2014):映画短評
地獄愛 (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
人殺しというより家畜の屠殺
‘40年代にアメリカで起きた連続殺人事件を基に、愛する男の結婚詐欺に加担しながらも、嫉妬のあまりカモになった女性たちを次々と殺害する女の凄まじい情念を描く。同事件は幻のカルト映画『ハネムーン・キラーズ』の題材にもなったが、こちらは現代のベルギーが舞台だ。
旧作との最大の違いはヒロインのキャラ設定であろう。男から見向きもされないデブの中年独身女が、初めて女として目覚めたことで情欲に溺れる旧作に対し、本作のグロリアはバツイチの平凡なシングルマザー。それゆえ我が子と同年齢の少女とその母親まで手にかけようとする姿に、想像を絶するような狂気を宿す。しかも、人殺しというより殆ど家畜の屠殺。強烈です。
強烈なクローズアップが伝える“狂恋”
『ハネムーン・キラーズ』と同じ実際の連続殺人犯カップルから題材を得ているが、こちらは同作とはテイストが異なる。女性視点で描いていることもあるが、かなりシリアスに切り込んでいる。
惨殺や死体の解体などのエグい描写はあるが、より強烈なのはクローズアップでとらえられたヒロインの表情。愛する者と向き合う歓びから、不機嫌、やがて噴出する激情へ。見ているこちらが、そんなヒロインと向かい合っているようで、緊張感がある。
F・ドゥ・ヴェルツ監督のタッチは『変態村』と同様に徹底してドライ。一瞬ミュージカル風のシーンも挟まれるが、それをショック描写につなげるあたりは、巧いというか、意地悪いというべきか?