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リバーズ・エッジ (2018):映画短評

リバーズ・エッジ (2018)

2018年2月16日公開 118分

リバーズ・エッジ
(C) 2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

くれい響

難攻不落な原作に挑んだことは認めたい

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

確かに、あの時代の空気感を再現することに成功したており、『2/デュオ』を意識したキャラ別インタビューのアイデアも悪くない。プロデューサー的役割も果たした二階堂ふみを始めとするスタッフ・キャストが一丸となって、難攻不落な原作に挑んだことは認めるが、似たような事件が現実に起こり、オザケンが叩かれるこのご時世にウケるかどうかは別モノだろう。しかも、小川紗良が行定監督の前作『ナラタージュ』の伊藤沙莉と、ほぼ同じもったいない使い方なのはいかがなものか? 118分の尺が倍以上に感じてもおかしくないような気もするが、元ネタであるティム・ハンター監督の『リバース・エッジ』が再評価されたら、それはそれで嬉しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

二階堂ふみと吉沢亮らが体現する「1995年」前夜の不穏な空気

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 殺伐とした現実を前に鈍麻したような二階堂ふみと不安や焦燥をはねのけるかのような吉沢亮が、まさに90年代前半の匂いを放つ。空漠とした風景と彷徨する若者を、窮屈なスタンダード画面に押し込めるキャメラが不穏な空気を醸成し、「1995年」前夜に引き戻される感覚に囚われた。しかし若手俳優陣が自ら演じるキャラクターについて語るインタビューが挿入され、今の本質を暴く時の流れは断ち切られる。その実験性は、現実逃避系が主流のトレンドに抗う行定勲が、あの頃を描く必然性に戸惑った結果のようでもある。作劇のみを通し、“川の流れ”が留まったままの現状を十分に表現し得ているので、異化効果は夾雑物に思えてしまうのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

原作の「気持ち」がしっかりと受け継がれた喜びに打ち震える

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

その時代を鮮やかに切り取っていた岡崎京子の原作が、20年以上経った現在にどうつながるか、期待と不安を胸に向き合ったら、信じがたいほど「今」の映画になっていて驚いた。

いじめやセックスなど、実写にしたらエグい描写もあり、映画化に際しては生ぬるく抑え気味にして、一般受けを狙う選択もあっただろう。しかし作り手も、演じ手も、ひるまずに挑んだ。その姿勢に感動する。

あまりに原作どおりという点に不満を感じる人もいるかもしれない。しかし原作では意識的に省かれた、コマと次のコマの間の感情が、俳優たちの血肉で見事に体現され、コミックの世界をここまで完璧に実写にした例を、ここ数年、観たことはない。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

完成度は圧倒的。

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

この映画の最大の賭けは、90年代の原作を現在からの遠近法で捉えるのではなく、今の時代との同質性を信じて「そのまま」差し出したことだ。おそらく時制の提示が明確にあれば随分通りが良くなっただろう。しかし深い愛と理解に基づく実写化として驚くほど丁寧。時空を超えて精神同士が繋がったかのように原作と映画の空気が同期する。

行定勲の演出には更新があると思う。メロウな持ち味に加え、エッジーな凄み。「平坦な戦場」の表象として郊外の工業地帯を捉えた槇憲治の撮影、世武裕子の音楽。全てがハイレベルの仕事で、役者陣も皆素晴らしい(土居志央梨の注目度は一気に上がるはず)。企画を牽引した二階堂ふみには惜しみない拍手を!

この短評にはネタバレを含んでいます
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