アイム・ノット・シリアルキラー (2016):映画短評
アイム・ノット・シリアルキラー (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
オリジナリティ溢れるインディーズ・ホラーの快作!
『ファーゴ』を彷彿とさせる真冬の田舎町。孤独な少年の周辺で陰惨な連続殺人事件が発生し、彼だけが犯人の存在に気付いてしまう。と、ここまではありがちなのだが、面白いのは少年が精神科医からシリアル・キラー予備軍と目されているソシオパスであることだ。
もしかすると彼が目撃した犯人は単なる妄想で、実は彼自身が犯人なのではないか…と思わせておいて、話はこちらの予想を覆すとんでもない方向へと展開していく。これには少なからず驚かされた。
メンタルに問題を抱えた多感な少年が、善悪の境界線を模索していく物語としても秀逸。語り口はポエティックだが、血みどろ描写も満載だ。近頃では珍しい独創性の高さを評価したい。
「かいじゅうたちのいるところ」の少年が高校生になったら
周囲にうまくなじめず、内に秘めた破壊衝動が膨れ上がるのを抑えながら、自分とシリアルキラーはどう違うのかと自問する。そんな誰もが一度は通る思春期の高校生が、なんと本当のシリアルキラーに遭遇してしまう。この設定がナイス! 青春ホラーにありがちな親友や恋人は登場せず、主人公は一人で自分の答を見つける。それが都市部ではなく、雪が積もる小さな町で起こるのがいい。さらに素晴らしいのは、シリアルキラーを単純な悪には描いていないことだろう。
そんな高校生を演じるのが「かいじゅうたちのいるところ」で怪獣たちと遊ぶ少年を演じたマックス・レコーズ。あの少年が成長したら、こんな高校生になるかもしれない。