エタニティ 永遠の花たちへ (2016):映画短評
エタニティ 永遠の花たちへ (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
ブルジョワ大家族スペシャル
ドビュッシーやバッハなどのクラシックに乗せ、極めて少ないセリフ量とナレーション(例によって監督の妻が担当)だけで進行する、いかにもトラン・アン・ユン監督作らしい匂い立つような世界観に浸る作品。『夏至』『ノルウェイの森』と、ユン監督と組んできた撮影マン、リー・ピンビンが捉える光と影は、人間の生と死のサイクルという普遍的なテーマのなか、麗しい妻から強い母を演じる3人の女優の魅力をより引き出していく。そのうち、「なぜ直系の三世代の物語じゃない?」や「この子、誰の子?」状態に陥るが、そんな細かいことは気にさせない魔法に酔いしれること必至。『ツリー・オブ・ライフ』とは似て非なる女性映画といえるだろう。
圧倒的な映像美で綴られる3世代の家族の歴史
当たり前のことだが、人間は何もないところに生まれない。我々には親がいて、その親にもまた親がいて、幾世代にも渡って紡がれてきた生命の流れの中に我々は存在する。本作はそうした命の連鎖をテーマに、フランスのとある裕福な家庭の3世代に渡る家族の歴史を、娘であり母親でもある女性たちの慈愛に満ちた目を通して描いていく。
とにかく映像の美しさが筆舌に尽くしがたい作品。そこはさすがトラン・アン・ユン監督。緑豊かな大豪邸を舞台にした上流階級の優美な暮らしぶりに思わずうっとり。と同時に、19世紀末以降の激動の歴史に翻弄されつつも、家族を守るため様々な困難や悲劇を乗り越えていく女性たちの物語にも心動かされる。