サーミの血 (2016):映画短評
サーミの血 (2016)自分を否定し続けた人生の代償は?
サーミ人については北欧とロシアに住むトナカイ遊牧民程度の知識しかなく、映画を見て初めて同化政策や分離政策があったと知った。少数民族ゆえに人生の選択が限られている主人公エレ=マリャが断固たる決意で前進し続けるたくましさに魅了される。演じるレーネ=セシリア・スパルロクの決然とした眼差しや表情が素晴らしい。彼女の心に渦巻いていたであろう被差別者としての怒りや差別する側への羨望、出自に対する複雑な思いがひしひしと伝わってきた。冒頭に登場する老いた主人公の怒りが徐々に理解できる構成で、最後に再びスクリーンに現れると彼女の見方が大きく変わる。そこにいたのは自分を否定し続けた代償を知った老女だから。
この短評にはネタバレを含んでいます