俺たちポップスター (2016):映画短評
俺たちポップスター (2016)ライター4人の平均評価: 3.3
「マジ歌」×「クリエイターズ・ファイル」
サシャ・バロン・コーエンがやりそうな、下ネタ満載な“音楽あるある”モキュメンタリー。ジャスティン・ビーバーのドキュメンタリーをパロった原題や、「スタイル・ボーイズ」の元ネタ、ビースティ・ボーイズから始まるギョーカイ裏話だけに、80年代以降の音楽シーンを熟知した方が楽しめるのは事実。とはいえ、いつも横道に逸れるジャド・アパトー監督作と違い、テンポよく、カメオ効果もあり、一気に観れる86分。どーでもいい歌詞に乗せ、徹底的に作り込んだ楽曲(&MV)だから笑える「マジ歌選手権」感に、「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」感もプラス。近年、日本でも乱立する再結成バンドを脳裏に浮かべて観るのも一興だ。
ポップスターの虚飾を暴く21世紀版『スパイナル・タップ』
ケイティ・ペリーやジャスティン・ビーバーのドキュメンタリー映画を徹底的に茶化す。そんなコンセプトから生まれた本作は、架空の人気歌手コナー4リアルの成功秘話に迫るドキュメンタリーの体裁を取りつつ、撮影中に次々と起きる不測の事態から、虚飾に彩られたポップスターの可笑しくも哀しい孤独な素顔を暴いていく。
言うなれば、21世紀版『スパイナル・タップ』。自画自賛だらけで中身は空っぽ、ファン以外は全く楽しめない昨今の音楽ドキュメンタリーに対し、これくらい恥部や醜態を曝け出してくれないと面白くないんですけどね!という作り手の本音が聞こえてくる。ただ、もうちょっと風刺にパンチが効いていても良かったかな。
現実と乖離したスターの孤独を笑い飛ばすよ
ジャド・アパトゥとお笑いトリオ「ロンリー・アイランド」のセンスが融合した本作は、笑いと風刺、イミフ〜な音楽に満ちている。アンディ・サムバーグ演じる主人公コナー・フォー・リアルという時点ですでにプププッだが、彼の現実との乖離っぷりがまた笑える。ジャスティン・ビーバーのドキュメンタリーにインスパイアされたのは明らかで、ポップスターという存在がいかに空虚なものかがよくわかる。イエスマンに取り囲まれ、虚飾に満ちた世界に耽溺するコナーは哀れだが、やっぱりプププッ。先日「不安に押しつぶされそう」と世界ツアーを中止したビーバーのファンもこの映画を見ればきっと、アイドルの孤独が理解できるかも。
サタデー・ナイト・ライブ陣が昨今の音楽シーンに鋭いツッコミ
ビジュアルだけ見るとバカ映画のようで、いや確かに登場キャラはおバカばかりなのでその意味ではバカ映画なんだが、その正体は鋭い批判精神に満ちたブラック・コメディ。例えば、主人公が歌う同性婚を礼賛する歌の繰り返しフレーズは「でも俺はゲイじゃない」だったりする。そのギャグの鋭利さも納得、本作は監督・脚本・出演陣はサタデー・ナイト・ライブの面々。昨今の人気セレブ・ミュージシャンの行状とそれに熱狂するファンたちに、でもそれヘンでしょ?を突きつけるギャグの連打が痛快。カメオ出演も超豪華で、エマ・ストーンが一瞬登場。リンゴ・スターやアダム・レヴィーンら人気ミュージシャンが本人役で楽しそうに大挙出演してる。