ヒトラーに屈しなかった国王 (2016):映画短評
ヒトラーに屈しなかった国王 (2016)ライター2人の平均評価: 4.5
王様が国民に愛されるのには理由がありました
ノルウェー国王ホーコン7世は、水戸黄門のように国のあらゆる場所を訪問したと読んだことがある。国民に選ばれた王だから、国民に尽くそうと決意しておられたのだろう。そんな国王だからナチスに降伏したくないのも当然だが、国家運営を担う閣僚の“交渉”という選択を尊重するのも国王のさだめ。ジレンマを感じつつ、閣僚を非難する息子に次期国王の心構えを諭すホーコン7世の気高さに「あ、これは」と感じるものがある。「王のため」と言う少年兵に「祖国のため」と言いなおす場面でもわかるが、無私の心で常に国民や国家のことを考え、最良の決断をと考える国王のお姿は、我が国の天皇陛下に通じていて僭越ながら親近感を覚える。
国家の主権が侵された時、リーダーが守るべきものとは?
第二次世界大戦中のヨーロッパ、中立国でありながらナチス・ドイツの侵略攻撃を受けたノルウェーで、年老いた国王ホーコン7世が、ドイツへの服従か抵抗かの二者択一を迫られる。服従すれば国家の主権も尊厳も放棄することになるし、抵抗すれば国民の命が危険に晒されることは確実。どちらへ転んでも茨の道だ。
その苦渋の決断は、恐らく今の日本だったら非難轟々、国家元首にあるまじき!と大ブーイング必至だと思うのだが、これが当時も今も国民に支持されているのは、やはり長年に渡って繰り返し周辺国から侵略・支配されてきた歴史を持つノルウェーだからこそだろう。そう考えると、自分も含め日本人の国防意識は甘いのかもしれない。