ひいくんのあるく町 (2017):映画短評
ひいくんのあるく町 (2017)この監督は町の中に残り続けるイノセンス=希望を追いかけていく
町はずれのホームセンターにいる「ひいくん」にカメラがついていくところから、次第にひとつの共同体の歴史と現在、不思議な有機性が見えてくる。場所は山梨・市川大門。甲府のシャッター街を映し出した大作としては空族の『サウダーヂ』があるが、こちらはわずか47分で、日本社会のある断面のずいぶん奥深くまで案内してくれる。
これを日本映画大学の卒業制作として撮った監督・青柳拓は、自らが直面した問題に素直に反応し、そこから生じた疑問に向け、ぴったり等身大のサイズで次の思考と行動につなげていく。戦略や野心どころか、余計な自意識すら絡むことがない。目の前の物事を身の丈でまっすぐ見つめるニュートラルな知性は宝だ。
この短評にはネタバレを含んでいます