セブン・シスターズ (2016):映画短評
セブン・シスターズ (2016)ライター3人の平均評価: 3.3
全体主義社会で家族愛が意味するのは?
小説「1984」に連なる、全体主義社会への恐怖を訴えるディストピアものとしてつかみの発想がユニーク。ただ、妊娠・出産が当局に統制されるなかで誕生した7つ子姉妹のサバイバルに比重を置きすぎて、管理側が単なる悪にしか見えないのが勿体無かった。性格が見事に異なる7人姉妹を演じ分け、体当たりアクションなどの見せ場が多いノオミ・パラスと違い、実力を出せないまま終わったグレン・クローズが可哀想。そしてノオミの演じ分けも『オーファン・ブラック』の域には届かないのがもどかしい。個人的には一人っ子政策の弊害を描いてほしかったが、中国で30年以上も続いた政策の是非が判断されるのはこれからなのかな?
設定は異色、ミステリーの謎解きは正攻法
1人しか子供を持ってはいけない近未来。
一卵性7つ子が、家の外では"1つの人格"を演じて社会生活し、家の中では素のままの個性の異なる7人として暮らす。だが、ある日、一人が帰宅せず、残った6人がその失踪の原因を探っていく。このかなりユニークな設定が、きっちり活かされた謎解きミステリー。失踪事件の犯人は誰なのか。その犯行の理由は何なのか。少しずつ謎が解き明かされ、ドラマチックな答が待っている。
この7姉妹が、武闘派、パーティ好き、理系オタクなど性格がバラバラで、外見もまるで別人。「プロメテウス」のノオミ・ラパスが1人で演じ分けるこの7人が、同じ画面の中でやりとりするのを見るのも楽しい。
独創性と緊張感あふれる傑作スリラー
最初から最後まで緊張感たっぷりで、目が離せない。優れたSFは、しばしば現代社会が抱える問題にも切り込むものだが、今作も、人口過剰や貧困家庭、ネグレクトなど リアルな問題に触れている。
ひとりしか子供を持つことが許されない時代に生まれた7つ子姉妹が、ひとりの女性を装って生きるというストーリー。ひとり7役を演じるノオミ・ラパスが、それぞれの個性をきっちり演じ分けつつ、抑圧された環境で育った姉妹間の複雑な感情や、たしかに存在する姉妹愛を、見事に表現している。 出番は少ないながら、圧倒的な存在感を放つグレン・クローズもさすが。暗く、悲しく、しかし感動もさせてくれる、独創性に満ちた傑作だ。