Ryuichi Sakamoto: CODA (2017):映画短評
Ryuichi Sakamoto: CODA (2017)天才が観客の目線に下りてくる、実直なドキュメンタリー
このドキュメンタリーで何より感動するのは、5年間も世界各地で坂本龍一を追いかけた監督の「執念」だ。東日本大震災後の被災地での心情をすくいとり、アフリカや北極で新たな「音」と出会う瞬間を映像に収める。ニューヨークの自宅で、寒さで指をさすりながらピアノに向かう姿は、「教授」と呼ばれた天才が、観客と同じ目線に下りてくる不思議な感覚を味わえる。
音楽、環境、そして映画。一人のアーティストのそれぞれへの向き合い方を真摯に映し出し、その真摯さゆえのオーソドックスな作りに少し物足りなさも感じるが、「戦メリ」や「ラストエンペラー」の裏話だけでも、映画ファンにはうれしい時間になるだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます