ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー (2018):映画短評
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー (2018)ライター6人の平均評価: 3.7
EP5後かEP7後の時代にこそ観たかった古風なアクション映画
西部劇フォーマットの脚本、60~70年代アクション映画の疾走感、旧三部作などに繋がるネタの数々。古風な作りは第1世代に訴求する。ジェダイとは無縁ながらも、師(父性)にあたる人物との関係によって神話性も用意され、SWらしさを担保する。とはいっても爽快感やユーモアセンスに欠け、主演男優の存在感の薄さはいかんともしがたい。そして何より、EP8による旧来の世界観の否定後、なぜ今ハン・ソロかという同時代性に疎かな側面は、“毎年公開疲れ”より重い失態。過去41年のSW映画史の中で、この物語を公開すべき最良のタイミングは2度あった。EP5後かEP7後だ。作品性よりもプロデュース面の甘さが本作を貶めている。
旧シリーズへの回帰は成功したのか!?
ミレニアム・ファルコンのコクピットにハンとチューイが初めて並ぶ場面にゾクゾクするものを覚えたのをはじめ、旧三部作のファンにはたまらない見せ場が多く、そういう意味では大満足。
A・エアエンライクは思った以上にハン役にハマっていて、とくに生意気なポーカーフェイス加減がよい。銀河最速のパイロットの話らしく、ドックファイトの見せ場もしっかり備えている。
ディズニー以前のシリーズの雰囲気を踏襲しているのは嬉しくもあるが、一方で新世代のSWにこだわっていた『フォースの覚醒』以後のシリーズの流れを止めてしまった感もなくはない。ここら辺が観客にとって、評価の分かれ目となるのではないか。
あの伝説の瞬間が目撃できる!
ハン・ソロについて語られてきたさまざまな伝説が、実際はどんな出来事だったのか、それが目の前で繰り広げられて興奮せずにはいられない。しかもそれらの出来事には、ちょっとしたヒネリも加えられている。さらに、知られていなかった事実が幾つか明らかになる。これまでの名セリフを踏まえたセリフの数々に、思わずニヤリとさせられる。それだけでもう大喜びだが、そんな『スター・ウォーズ』ファン視点を気にしなくても楽しい冒険活劇。無法者のベケットや操縦士のリオ・デュラント、女性型ドロイドL3-37など、シリーズ初登場の登場人物たちはみなキャラが立ってて魅力的。夢を抱く一人の若者の繰り広げる冒険が、胸躍らせてくれる。
ロン・ハワードだから、やるべきことはやっている。
ロン・ハワード監督になったことによる“2人のキャスティング”は嬉しいが、仕事的には「ロバート・ラングドン」シリーズ並。チューイやランドとの出会い、「銀河一のパイロットになる」な想いなど、”やるべきことはやっている感”はある。もちろん、オマージュ・カットなどのファンサービスも用意。とはいえ、期待していたソロの「無法者・ならず者」感が薄すぎるわ、幼なじみのキーラの方が美味しいわ、アクションシーンにキレはないわ、と問題点も多し。チューイとのBL要素をもっと強めても良かったとも思うが、「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」がTVシリーズだったことを考えると、やはり企画的にもムリがあったのでは?
スピンオフとして、これは正当な作り
『ローグ・ワン〜』が、それに続くエピソード4に物語のバトンを渡す役割だったのに対し、今回の『ハン・ソロ〜』は、あくまでも青年ヒーローの冒険ドラマとして独立性が高い。スピンオフとは、こういうものだという見本。冒頭、惑星コレリアの徹底的ダークな色調や、アクション見せ場の配置など、本シリーズとの距離は意識されている。点在するシリーズへのリンクでは、若きハン・ソロ役のオールデンが、立ち方や腕の位置など微妙にハリソンの癖を模倣して健闘。チューバッカやミレニアム・ファルコンとの遭遇というポイントに、ジョン・ウィリアムズのスコアが重なれば、本能的に心が震える。
「スター・ウォーズ」世代であることの幸せを感じる
「スター・ウォーズ」シリーズをリアルタイムで観続けて来られたことの幸せがわきあがってくる1本。ハン・ソロの始まりの物語が丁寧に描かれ、こんなに長い間ハン・ソロを知っていたのに、こんなことも知らなかったんだ! と目からウロコな場面にたびたび遭遇する。チューバッカとの出会い、ミレニアム・ファルコン号との出会い、そしてハン・ソロの名前の由来まで、人間ドラマの名手ロン・ハワード監督だけにそれぞれに説得力のあるドラマがあり構成は超一流。若きハン・ソロ役のオールデン・エアエンライクはハリソン・フォード演じるハン・ソロと銃の構え方までそっくりなオーバラップ度100%で完成度の高さは文句なし。