娼年 (2018):映画短評
娼年 (2018)ライター2人の平均評価: 4
松坂桃李がリアル『パディントン』と化す!
同じ事務所の後輩、菅田将暉に続き、勢いが止まらない松坂桃李だが、ここにきて会心の一撃! しかも、リアル『パディントン』のような、世の女性にとっての癒しキャラがどハマリ。三浦大輔監督の“妥協なき性描写”は、「舞台版」と変わらずだが、「映画版」では女性キャストの裸体より、松坂演じる“娼夫”リョウの表情を捉えたカットが長い。さらに、ひと昔前のトーキョーナイトライフを捉えたオサレさや意味深な演出もあって、一見女性向けに見えるかもしれない。だが、惑わされてはいけない。一皮ムケば、女たち(+1)との出会いによって、一人前の男になる少年の成長物語。艶笑コメディでもあるだけに、劇場で笑い声をこらえる必要なし!
大胆な性描写に挑んだ作り手のチャレンジ精神を評価したい
これだけ全編に渡って赤裸々な性描写の溢れた作品は、近年の邦画界でもかなり稀だと言えよう。しかも、一般作としてはかなりギリギリのレベルだ。日常で漠然とした疎外感を抱える若者が男娼となり、セックスを通じて満たされぬ女性客たちの抑圧された心を開放し、彼自身もまた女性たちとの関りを通して人間的に成長する。
性を人間同士の重要なコミュニケーション・ツールとして捉えたストーリーは、ありきたりにも思えることは否めないが、しかしキャスト・スタッフの大胆なチャレンジ精神は素直に評価したい。このところ難役に挑み続けている松坂桃李の役者根性は見上げたものだし、大女優・江波杏子もさすがの貫禄だ。