ロング,ロングバケーション (2017):映画短評
ロング,ロングバケーション (2017)ライター2人の平均評価: 3
生涯連れ添うことの、美しさと現実
48年間を一緒に過ごし、ふたりの子どもを立派に成長させたジョンとエラ。ジョンのアルツハイマーが日に日に悪化する中、老夫婦は、子どもたちにも内緒で長いドライブ旅行に出る。その途中では、いろいろなことを忘れている夫に苛立ったり、涙したり。だが、だが、そのたびに、ふたりの間には本当の愛があることも見せられていく。老人人口が増え、介護が大きな問題になっている今、これは誰にとっても他人事ではない話。舞台が2016年で、夫婦がたまたまトランプ支持者の集まる場所に居合わせるなど(ジョンはずっと民主党派だったのに、それも忘れている!)、アメリカの風景がちらほら見せられるところも面白い。
終活を考える世代に新たな選択が加わるかも
長年連れ添った老夫婦のロードムービーなのでほのぼのした物語ではあるけれど、人生の終焉を前にした人間らしく心の澱が噴出する場面もしばしば。特に胸に迫ってくるのがヘレン・ミレン演じる老妻エラの心もようだ。アルツハイマーを抱える夫の失敗にときにイラつき、イラついたことに後悔したり。過去に抱いた不安感の原因がわかったときの怒りようには、同性として深く納得。記憶の混同って本当に怖い。二人の旅が単なる観光旅行でないことがわかるクライマックスは見る人によって賛否が分かれるだろうが、終活の選択肢の一つとしてはアリだと思った。快活な元サザン・ベルになりきったミレンの演技が完璧なのは言うまでもない。