顔たち、ところどころ (2017):映画短評
顔たち、ところどころ (2017)ライター2人の平均評価: 4.5
年齢差54歳の凸凹コンビが、笑って泣かせる!
ほぼ終活ドキュメンタリーだった『アニエスの浜辺』から約10年。年齢差54歳のアーティストを相方に迎えたアニエス・ヴァルダのさらなる旅は、「田舎に泊まろう!」ならぬ、田舎で撮ろう! どんなに地味でも、どんなに偏屈でも、彼らの被写体になった瞬間、いい顔になり、輝き始める。そんな交流が描かれる一方、タモさんばりにグラサンを取らない相方に、監督作『5時から7時までのクレオ』でサングラスを取った盟友ゴダールの姿を重ねるアニエス。ルーブル美術館での『はなればなれに』ごっこを経て、やはり期待してしまうクライマックス~ラストの展開は、どんな監督も演出できないサプライズといえるだろう。
A・ヴァルダ監督の人間力に惚れ惚れ
気鋭の写真家JRと一緒にフランス中を移動しながら、アート作品を製作するドキュメンタリーにはアニエス・ヴァルダ監の魅力が詰まっている。ユーモアたっぷりで温かく、鋭い審美眼を持つ彼女の最大の魅力は人間が好きという点だろう。様々な人々と交流した上でJR独自の視点を借りて、出会った人々を的確に表現する洞察力が素晴らしい。まさに人間力だ。87歳にして、積極的に世界を広げる監督のバイタリティに感服する。映画製作と旅のパートナーとして互いに刺激し合うJRとの関係性にも引き込まれる。登場せずとも大いなる存在感を発揮するゴダールとの来し方の違いが明確になるエンディングでのアニエスとJRのやりとりが心に残った。