グリンチ (2018):映画短評
グリンチ (2018)ライター5人の平均評価: 3.4
愛らしさとユーモアに立脚したクリスマス・ムービー
ジム・キャリー主演による2000年の実写版はファンタジーとユーモアの他に恐怖色も宿っていたが、イルミネーション製作のアニメーションだから、そちらは控え目。
前回の映画化ではともすれば不気味に見えたグリンチも本作ではキュートに変身。イヤなヤツでも最終的には魅力を宿らせる、イルミネーションならではのキャラクター作りの妙が活きた。かわいらしい子どもキャラの個性的な役割分担も考え抜かれている。
大人の観客としては、もうワンパンチ欲しいところだが、クリスマス季のアッパーな気分にフィットするのは間違いない。グリンチの声を担当したB・カンバーバッチのユーモラスな妙演も光り、気持ちよく楽しめる。
山の上の孤独に、うっかり同情してしまう瞬間も…
どんなに自分中心でワガママで、ひねくれ者でも、そして許せないほど嫌がらせをしても、このグリンチにどこか同情してしまうのは、『シザーハンズ』のエドワードや『美女と野獣』の野獣と同じ果てしない孤独感が漂っているからだろう。原作ではグリンチと村の住民の外見は似ていて、ジム・キャリー版でも同じ人間が演じている共通点はあったが、今回はまったく別種の外見。より隔絶感が強調された。
徹底して予想どおりに進む物語は、お約束的な楽しさだが、異様にデカくなる盗んだプレゼントのビジュアルや、愛犬マックスのあまりの献身ぶりなど、不覚にも心をつかまえられる瞬間がチラホラ。クリスマスに最適な一本であるのは間違いない。
グリンチの愛犬マックスからも目が離せない
実写版映画もあった名作絵本のアニメ映画化だが、ポイントは製作会社がミニオンズで有名なイルミネーション・エンターテインメントだという点。色彩もいつものイルミネーション作品の色。さらに、動物たちが主人公の「ペット」「SING/シング」を大ヒットさせた同社らしく、得意の"キュートな動物たち"を本作にもたっぷり投入。グリンチには執事のような犬マックスがいて、この犬がグリンチに負けない存在感を発揮。さらに彼らは、巨体のトナカイとも同居することになる。この犬やトナカイの活躍が、犬好き、動物好きにはたまらないはず。名作絵本を題材にしつつ、しっかりイルミネーションならではのアニメになっている。
良くも悪くもイルミネーション作品
今となっては『アングリーバード』などの元ネタだが、「スクルージ」の影響をモロに受けている原作絵本。かなりティム・バートンの世界観に寄せたロン・ハワード監督の実写版に比べると、毒は薄めで、かなりファミリー向けな仕上がり。日本語吹替の大泉洋の起用は、実写版のジム・キャリーありきのようにしか思えなくないが、イルミネーションテイスト全開なグリンチの相棒犬・マックスの可愛さに、グリンチのモフモフ感などのCG技術、さらに今度こそはのダニー・エルフマンによる劇伴などは、今回の大きな注目ポイント。ちなみに、短編『ミニオンのミニミニ大脱走』は、おまけ感が強いため、過度な期待は厳禁!
一周まわって普通にメリークリスマス
毎度おなじみ、X'masの聖なる力(&ある種の正論)で中二病的ひねくれ男を諭すお話。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』派としては基本「上から目線」な説教臭さが苦手ではあるんだけど、アクション主体の軽快な語り口が魅力で結構脱臭作用がある。こってり芝居で押すジム・キャリーの実写版(00年)よりずっと見やすいかなと。
イルミネーション作品はいつも既成曲が溢れるジュークボックス・アニメーションといった趣だが、今回はコンセプトが強固なせいか、ダニー・エルフマンのスコアがメイン。もちろんさすがの出来ばえ。そしてリトル・リチャードが流れる前座短篇『ミニオンのミニミニ脱走』のロックンロールな快走で加点!