2重螺旋の恋人 (2017):映画短評
2重螺旋の恋人 (2017)ライター2人の平均評価: 3.5
双子への過剰なロマンチシズムがちょっと怖い
精神科医と恋に落ちた女性が、恋人には性格が真逆な双子がいると気づいたことで疑心暗鬼になる前提に乗れるか否かで受け取り方が分かれるかもしれない。“氏より育ち”派な私は、最後まで斜めに構えて見たので、完全なる共感はできずじまい。もちろん双子の関係性を暗示させる鏡や反射を使った映像やシンメトリーな構図はおしゃれで、さすがはオゾン監督。一人二役のJ・レニエや壊れた演技に説得力アリなM・ヴァクトの熱演も素晴らしいし、久々のJ・ビセットもさすがの存在感! ただし、監督の双子への過剰なロマンチシズムがナチスのメンゲレ医師を思い起こさせて、ちょっと怖いと感じたのも事実。
双子が導く妖しいナルシシズム
このところオゾンは、男2&女1の関係に執着しているようで、『婚約者の友人』『彼は秘密の女ともだち』でも男女の関係を軸にしつつ、彼らしく男同士の愛を妄想的に挿入、あるいは強烈に染み込ませていた。今作で双子役のジェレミー・レニエを、かつて起用した『クリミナル・ラヴァーズ』でも、彼が演じた若者と恋人、森の男との関係に余計な想像を喚起させたように、この関係性はオゾンの大好物なのだろう。今作でもその流れをくんだ妄想的シーンが炸裂するが、「同じ外見の分身を愛でる」という点で強烈なナルシシズムが立ち込める。似た関係性のクローネンバーグ監督の『戦慄の絆』に比べると物語は想定内だが、オゾンらしい妖しさは盤石。