止められるか、俺たちを (2018):映画短評
止められるか、俺たちを (2018)ライター3人の平均評価: 4.3
映画で世界を変えようとした若者たちの熱き青春群像
学生運動が盛り上がった’60年代末、反体制スピリット溢れるピンク映画で鳴らした鬼才・若松孝二監督。彼が主宰する若松プロに集まった映画青年たちの熱き青春群像を、紅一点のスタッフだった助監督・吉積めぐみを軸に描く。日本の若者たちが真剣に政治と向き合い、芸術を通じて世界を変えられると信じた、あの頃の沸き立つような熱気。その渦中で「自分はなにがしたいのか」「自分には何ができるのか」と自問自答を繰り返しつつ、激動の時代を真っすぐ駆け抜けためぐみたち。50年近く前、確かにそこにあったささやかな青春。その儚くも眩しいきらめきに胸が熱くなる。吉澤健や篠原勝之など若松監督に縁が深い人々のカメオ出演も楽しい。
若松プロの熱すぎる空気感に前のめりになる
白石和彌監督に惹かれて見たが、若松孝二の破壊力の凄まじさに笑っちゃうほど驚いた。井浦新の顔立ちで救われるが、実際はパワハラ? 足蹴にされても殺されかけてもついていった若き映画人の思いは様々だったろうが、映画を作りたいという情熱や臨場感が伝わってくる。紅一点だった吉積めぐみを軸とする青春映画に仕立てられているので、ドラマとしても見応えあり。演じた門脇麦の70年代の新宿から飛び出してきたようなタイムレスな魅力が生きた。多彩な才能を育てた若松プロの熱すぎる空気感に前のめりになるし、日本のインディーズにももっと光をと思った次第。そしてタモト清嵐が好演した秋山道男の物語を映画化してほしいと切に願う。
門脇麦の代表作、きました。
門脇麦が「これぞ青春キラキラムービー!」と発言したのも頷ける。1969年、ピンク映画界に飛び込んだ一人の女子が出会う男たちは有名無名関わらず、かなり曲者で、どこか魅力的。そんな彼らに影響され、ぶつかりながらも、映画界に立ち向かっていく門脇演じる保積めぐみは、“英徳の~”ならぬ“若松プロのジャンヌダルク”になっていく。ここまで若松プロ関係者が揃うと、単なる身内受け映画にもなりそうだが、そこは三角マーク映画まで昇りつめた白石和彌監督。普遍的な青春群像劇に仕上げたうえ、お得意の女性映画としての見応えもたっぷり。間違いなく門脇の代表作であり、若松プロ作品を知らない人こそ観るべき一本だ!