メアリーの総て (2017):映画短評
メアリーの総て (2017)ライター4人の平均評価: 3.3
18世紀にフェミニストであることの意味を考えた
倫理観なき科学の暴走や父子関係、宗教観など多彩なテーマを含む小説「フランケンシュタイン」。若干20歳にして画期的なSF小説を書き上げた女性作家の人となりや人間関係、作品に込めた思いが伝わる作品だ。詩人パーシーとのロマンスがメインかと思いきや、女性作家が認められなかった時代のヒロインの葛藤や心模様に比重が割かれている。女性の権利向上を訴えるTimesUpムーブメントにも通じるが、時代を先取りしたフェミニストの存在は現代女性にとっても心強い。E・ファニングはじめ注目の若手が頑張っていて、なかでも強烈な印象を残すのがバイロン役のT・スターリッジ。背徳的な雰囲気を醸し出している。
フェミニズム的視点から『フランケンシュタイン』の本質を探る
怪奇小説『フランケンシュタイン』の誕生秘話といえば、ケン・ラッセル監督の『ゴシック』がつとに知られているが、本作では作者メアリー・シェリーの人生を紐解きつつ、彼女がフランケンシュタインの怪物に込めた思いを浮き彫りにする。知的で聡明で才気あふれる18歳の若き女性メアリー。詩人シェリーという理解者に出会い、愛と自由を求めて羽ばたこうとする彼女だが、しかし思うようにならない人生の厳しい荒波と、女性の自立を認めない社会の現実が目の前に立ちはだかる。フェミニズム的視点から『フランケンシュタイン』という傑作の本質を探っていく文芸映画。理想に燃えるナイーブなメアリーを演じるエル・ファニングがはまり役だ。
「フランケンシュタイン」執筆秘話を"女性の自立"視点で描く
これまで小説「フランケンシュタイン」執筆裏話は、ゴシック小説の誕生という観点から描かれがちだったが、本作は"女性の自立"という視点から描く。監督は「少女は自転車にのって」の女流監督ハイファ・アル=マンスール。1818年、18歳のメアリー・シェリーがこの小説を書き始めた背景に、父親の影響、既婚者との恋愛、幼い子供の死、当時の社会通念との軋轢などを配置して、それらが彼女にこの小説を書かせるというストーリーは、ドラマチックで分かりやすい。それでいて、あの小説に込められたものはそれだけではないのではないかとも思われて、「フラケンシュタイン」という作品の持つ力を再認識させられる。
#TimesUpの時代にふさわしい、興味深い伝記映画
ホラー界の最も重要なキャラクター、フランケンシュタインの生みの親は、若い女性。だが、それが理由で、あの傑作は、もしかしたら埋れたままで終わったかもしれなかったのだ。女性に対する偏見や不平等の是正を訴える「#TimesUp」運動が巻き起こる中でこの映画が公開されるのは、最高のタイミング。しかし、それは映画のほぼ終わりになってからで、そこまでは16歳の主人公メアリーが、情熱的な恋のために苦労を強いられる様子が描かれる。そのため、どちらかというとメロドラマっぽくもあるのだが、そこでも当時の女性がどのように生きていたのか、何を期待されていたのかが語られて、興味深い。