葬式の名人 (2018):映画短評
葬式の名人 (2018)ライター2人の平均評価: 3
川端文学をモチーフにしたシュールでほろ苦いコメディ
川端康成の作品群をモチーフにした企画ということで、随所に様々な川端文学のエッセンスを散りばめつつ、そろそろ若者とは言えなくなってきた迷える男女たちが、突然亡くなった高校時代の同級生の通夜のため10年ぶりに集まるものの、思いがけない出来事が立て続いていく。その混沌の中で人生を見つめなおし、友情を新たにしていく彼らの姿が、どことなくファンタジックなテイストで描かれるわけだが、時として脱線しがちになるシュールなユーモアが必ずしも成功しているとは言い難い。強く逞しきシングルマザーを演じる前田敦子の存在感は魅力。また、大女優・有馬稲子に巨匠・中島貞夫など、日本映画界のレジェンドの登場も嬉しい。
ダダ洩れする実相寺・大林映画オマージュ
川端康成の作品群をモチーフにしながら、思いのほか、そのテイストは薄く、その代わりに実相寺昭雄やら、大林宣彦やら、シュールでファンタジックな一風変わった日本映画へのオマージュがダダ洩れ! しかも、高良健吾とは『多十郎殉愛記』繋がりか、中島貞夫監督が組長役で登場。終盤の有馬稲子登場シーンとともに、場面をかっさらっていく! そういう意味では、ご当地映画として、ちょっと面白い仕上がりになっているが、そのノリに誰もがついて行けるかは疑問だ。そんななか、初めて母親を演じた前田敦子のヒロイン感がハンパなく、『旅のおわり世界のはじまり』に続き、ただ立っているだけで画が持っている。