ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス (2017):映画短評
ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス (2017)ライター2人の平均評価: 5
不寛容な社会に向けた、巨匠の静かで熱いメッセージ
作品の解釈は観客に委ねられているが、何故そこにカメラを置いたのか、作り手の明確な意図はある。
監督は前作『ニューヨーク、ジャクソンハイツ へようこそ』に続き、人種の坩堝N.Y.を象徴する多種多様な人たちが集う場所で、共存することの有意義さを写した。
9.11以降顕著になった、不寛容な社会へのメッセージがそこにある。
市民に開かれた施設だ。
だからカメラは会議にも入り込み、金の問題も曝け出す。
ホームレスやネット環境のない貧困層など社会から取り残されそうな人たちを公共施設として何をすべきか。
交わされる建設的な議論のなんと豊潤なことか。
この街が”世界の中心”と称される理由が分かるはずだ。
「一条の光」がたくさん集まっている
イーストウッドやゴダールと同じ「花の1930年組」! ワイズマン御大の新作はやはり絶品。『ジャクソンハイツへようこそ』の続編的でもあるが、内容は清廉な印象が強く、シンプルに言えば「元気になる」映画だ。この公共施設は困難を増す米社会の知性や良心の砦であり、その為に尽力している人達が数多くいることを希望として提示してくれるから。
E・コステロやP・スミス、R・ドーキンス博士など著名人もよく訪れるが、例えばある黒人女性がジョージ・フィッツヒューの奴隷制擁護論を引きながら、マルクスとリンカーンに言及し自由社会の可能性を説く姿に不意に圧倒されたりする。この濃密さ、3時間半の施設案内は全く長くない。