ゴーストマスター (2019):映画短評
ゴーストマスター (2019)ライター3人の平均評価: 3.3
映画愛と風刺精神に溢れた'80年代風スプラッターの快作
金儲けのため安易に量産されるティーン向け恋愛映画の撮影現場で、ホラー映画愛に燃える助監督の持ち込んだ脚本に『死霊のはらわた』の「死者の書」のごとく邪悪な命が吹き込まれ、やがて阿鼻叫喚の血みどろゾンビ・パニックが巻き起こされる。共通項の多さゆえ『カメ止め』と比較される運命は避けられない作品だが、しかし全編を貫くヤング・ポール監督のサム・ライミやトビー・フーパーへの熱烈な愛情、そして日本の映画界・芸能界に対する痛烈な風刺精神は、より強く映画マニアに訴えかけるものがある。スプラッター描写の容赦なさもポイント高い。愛さずにはいられない作品だ。
板垣瑞生の覚醒がスゴい!
制作現場の内幕モノ×ホラーという題材ゆえ、先発の企画だったり、コンセプトは違えど、『カメ止め』と比較される運命だろう。とはいえ、『カメ止め』以上の映画愛、特に『死霊のはらわた』『スペース・バンパイア』を始めとする1980年代ホラー愛に満ちている。そのため、テンポ良く畳みかけるわけでもなく、どこか和やかな雰囲気も80`sスラッシャームービー風であり、セルフパロディからイケメンキャラ崩壊と覚醒する板垣瑞生ら、演者たちが楽しく芝居してるのも手に取って分かる。そんななか、あずきバーの登場など、散りばめられたギャグが狙い過ぎて笑えない。なにより、タランティーノに何か恨みでもあるのか?
トビー・フーパー監督のファンは必見!
壁ドン恋愛映画の助監督をする主人公が、実はトビー・フーパー監督のファンで、彼が映画化したくてまだ出来ないでいるホラー映画の"脚本"に命が宿り、勝手に動き出す---という設定だけで、そんじょそこらの恋愛映画より胸キュンってもの。途中で主人公がフーパー監督の「スペースバンバイア」への愛を熱弁するシーンに、思わず胸が熱くなること間違いなし。
"脚本"が映画になりたがって俳優に憑依するが、しかし俳優の精神には別の脚本にリンクしたままの部分あって、てな展開もあり、これはひょっとしたら一種の映画論、俳優論なのかと勘違いしてしまいそうにもなる。それはさておき、成海璃子がすごく可愛い。