名探偵ピカチュウ (2019):映画短評
名探偵ピカチュウ (2019)ライター5人の平均評価: 3.2
作り手のポケモン愛だけは感じる!
東京やロンドンをゴッタ煮した街並みに、ポケモンと人間が共存する世界観を違和感なく再現し、なにしろポケモンが可愛く見えるだけで(特にコダック!)、初期世代のハートはつかめるかもしれない。そういう意味では、作り手のポケモン愛を感じ、同じニンテンドー映画『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』の二の舞になっていない。とはいえ、ライアン・レイノルズによる、おっさんピカチュウは『テッド』ほどのインパクトはなく、バディムービー×少年の“父離れ”成長物語を描いた脚本も、謎解きの弱さも含め、ディズニー・チャンネル御用達の脚本家っぽい無難な作り。ビル・ナイも予想通りの役回りです!
モフモフ&ふわふわのピカチュウにビリビリ痺れました
事件の謎解きと父親との間に溝がある青年をからめた物語には目新しさはないが、『ゲットダウン』で好演していたJ・スミスの少年ぽさが効いている。謎に巻き込まれ、あたふたしながら成長する設定に無理がない。ただし最大の魅力はやはり、ポケモンの世界観をしっかりと実現した映像美と特撮。ご贔屓モンスターを探すのも楽しいし、実写版のピカチュウは質感がモフモフ&ふわふわ。瞳と口元が可愛すぎて、登場するなりノックアウトされてしまった。しかもライアン・レイノルズの声が意外にもマッチしている。デッドプールほどお下劣じゃないものの、笑えるジョークを連発するのも楽しい。コーヒーを飲みながら見ることをおススメします。
ポケモンたちそれぞれのマイペースぶりが楽しい
ポケモンは、ゲーム「ポケモンGO」が大ブームになった時にちょっとやったことがあるだけというポケモン歴の浅い立場から見ても、ポケモンと人間が共存する世界の描かれ方に共感できる。ポケモンたちは、人間たちが近くを歩いてもあまり気にせず、それぞれマイペースで生きているのだ。人間のほうは、パートナーのポケモンを手に入れると夢中になってしまうし、一部の人間はポケモンの悪用を考えてしまうのだが。
ポケモンは街のあちこちに無数にいて、全種類は把握できないほど。活躍するのが必ずしも人気ポケモンではないのは、「モンスターVSエイリアン」も手がけたロブ・レターマン監督の趣味かと思うと、それも楽しい。
世にも不思議な感覚のビジュアルが、じわじわ快感に変わっていく
ポケモンのように「非人間」キャラを実写に登場させる場合、「リアル」に寄せてビジュアル化させる選択もあっただろう。しかし今作は徹底してオリジナルデザインを遵守。ゆえに実写風景では、それなりの違和感ももたらす。しかし、アニメとの合成とも違う、ゆるキャラやテーマパークのキャラが平然と人間と交わってるシュールな光景は、じわじわ“来る”不思議な快感!
アクションの見せ方やカットのつなぎがイマひとつスペクタクル感を欠くし、デップーのライアン・レイノルズにピカチュウを演じさせた効果も薄めだが、全体として温かい目で観てしまうし、ポケモン好きにはキャラ発見と、彼らの役割で終始テンションが維持されるはず。
オッサン声のピカチュウだからこそ光る妙味
アニメ等でおなじみの『ポケット・モンスター』ではなく、あくまで同名ゲームの実写映画化。同一の世界観を持つとはいえ、その点は、まず踏まえておきたい。
ピカチュウがオッサン声で話すのもそれゆえだし、物語上の理由もしっかりある。そんな不良ピカチュウと孤独な青年のやりとが本作の肝。丁々発止はコミカルで、『デッドプール』ほど下品ではないがノリノリのライアン・レイノルズの声の妙演が光る。
ファミリームービーゆえに物語の深みは大人の観客には物足りないが、親子の絆のエピソードが活き、スッキリと楽しめる。オッサン声でも見た目はかわいいピカチュウ他、人気ポケモンの登場はファンには嬉しいところ。