ゴッズ・オウン・カントリー (2017):映画短評
ゴッズ・オウン・カントリー (2017)ライター2人の平均評価: 4
ヨークシャーの荒野の厳しい美、無骨な愛
ヨークシャーの荒野に吹く風の冷たさ、昼でも弱い光線、青色がかった湿った大気、地面に張り付いた短い草ーー北の地を映し出す映像の美しさに圧倒される。題名のように"神自身の土地"と呼ばれるこの地は、その通り、人間よりも神に相応しい美しさを持ち、その厳しさゆえに神以外のものが生きていくのは難しい。その地の牧場で働く主人公たちの暮らしでは、生き物の生も死も、日常の中ですぐ近くに手で触れられるものとしてある。その土地で、2人の人間が凍えないため、生き延びるために、わずかな暖を求めて手を伸ばし合う。そんな北の地で生きる人々らしい、言葉の少ない、無骨な、しかし単純で純粋な愛が強く胸を打つ。
”おっさんずラブ”並に萌え
映画は時に、自分でも思ってもみなかった感情をわき立たせてくれるものだ。
あるのは厳しい現実だけ!というような荒涼たる世界で繰り広げられる無骨な青年と、移民の季節労働者の不器用だけどいじらしい愛に、まさかのBL萌え。
それもこれも、牧場の仕事を見事にこなして役と一体化した俳優陣の演技を筆頭に、映像、脚本、その全てが
これが虚構の世界であることを忘れさせた結果だろう。
そこに漫画のようなお約束の胸キュンシーンを所々入れてくるのだからニクい演出をするものだ。
英国インディペンデント賞などを受賞したのも納得。
日本で配給が付かずイベント上映のみなのが惜しまれる力作である。
*その後2019年に公開決定