宮本から君へ (2019):映画短評
宮本から君へ (2019)ライター3人の平均評価: 5
こう見えてフェミニスティックな映画なんだよ。
この前篇に当るTVシリーズも激熱だったが、その全12話を煮詰めに煮詰めたが如きハイカロリー、ハイテンション。とにかく咽喉も裂けよとばかりに真正面から罵り合い続ける(というかこれは愛を交わし合うのとほぼ同義なのだけれど)池松壮亮&蒼井優の、その常人離れしたエネルギーには驚倒するばかり。敵キャラ・真淵拓馬と宮本のノースタント決闘シーンは、ガチンコ・スタイルをアマチュア時代から貫く真利子イズムの発露だが、それ以上にアクション映画的なのがこの、声も枯れよといわんばかりの台詞の応酬だ。二人の「愛の試練」の発生と苦闘そして克服を、現在と過去を交錯させて描いていく構成も効果的で、映画として実に正しい。
誰よりもでかい声と気合で
真理子哲也がストレートにパンチを打った時の破壊力よ! 正直ドラマシリーズの段階では偉大な原作を前にした空転を多く感じていたが、この映画では体勢を変え、重心を低くして格闘し直すことで、かつて原作を読んだ時のフレームから溢れ出る120%の熱量と余韻が同じレベルで甦る感覚を覚えた。『イエローキッド』『ディストラクション・ベイビーズ』から観念性を剥ぎ取った灼熱の塊!
全身全霊の池松壮亮。より「攻め」の領域に足を踏み入れた蒼井優。『斬、』で共演したばかりの二人がまるで違う見え方をする。最強プロのリング上の真剣勝負をずっと観ている様。“極東のマンション”とエンディング曲は赤いゾーンから針が振り切れてる!
魂と魂がぶつかり合う!
宮本憧れの女・美沙子のフェードアウト後、ライバル・益戸との営業バトルなど、中盤以降のTVシリーズは正直厳しかったが、それをチャラにするほどエネルギッシュな“後半戦”(ドラマ未見でも、とりあえず問題なし!)。男と女、男と男の魂と魂がぶつかり合うなかで、絶叫に性交に乱闘。益戸を超える天敵・拓馬が“悪魔”と化すシーンの演出も胸クソ悪いぐらい容赦なく、その熱量は韓国映画に近い。間違いなく池松壮亮の代表作になったが 真利子哲也監督作としてもベストな仕上がりに。好みは大きく分かれるが、『愛しのアイリーン』に続き、新井英樹原作の映画化は、確実に日本映画界に爪痕を残す!