町田くんの世界 (2019):映画短評
町田くんの世界 (2019)ライター3人の平均評価: 4
いいじゃないか、正義の暴走!
いやはや、早くも2019年度邦画マイ・ベストワンが登場してしまった予感。それほどまでに面白かった。「人類みな家族」な天然博愛男子高生・町田くんが、世間にはびこる冷笑・無関心・諦めのムードを尻目に、「困った人に手を差し伸べる」「他人に親切にする」「弱い人に力を貸す」という当たり前の「正義」を、脇目もふらずに実践していく。とはいえ、1人でみんなを助けることなど出来ない。その現実にぶち当たった町田くんが、初めての恋を通して成長していくことになる。ありきたりな表現で申し訳ないが、この世知辛い世の中に希望の光を与えてくれるような作品。ファンタジックなラストも素敵。いいじゃないか、正義の暴走!
“心地良い違和感”で魅せ切るファンタジー
主演オーディションで大抜擢された細田佳央太のルックスが、石井裕也監督作でおなじみの森岡龍そっくりであるだけでなく、作品のテイストも監督の自主作品(『反逆次郎の恋』『ガール・スパークス』)にも通じる“一風変わった青春”。ガチで原点回帰ということで、シュールなギャグに、ピュア<<奇人感が強い町田くんのキャラといった攻めの映画化に、原作ファンは賛否間違いなしだろう。そして、ファンタジー濃厚なクライマックスに突入するが、そんな世界観だけに、実年齢を無視した制服姿の豪華キャストも、「今日から俺は!!」にも似た“心地良い違和感”で魅せてくれる。ちなみに、太賀に至っては、アホキャラ繋がり!
前田、岩田、高畑、太賀が高校生役で違和感のなさは奇跡的
おそらく計算のうえだろうが、キャストのバランスが絶妙。演技初挑戦の2人を中心に、周囲に高校生役にかなり無理のある年齢のキャストを配したことで、主人公たちのピュアさが際立ち、初々しさに共感させることに成功した。町田くんの過剰な言動と、それに合わせたマンガ的な一部演出も、あざとさは限りなく消えていく。ゆえに「何事にもしっかり向き合う」「わからないから、この世界は楽しい」という、ありきたりのテーマも輝きを放つのだ。
ただ、重要なシーンの演出に違和感を抱く人もあるはずで、そこが踏み絵のように、作品の印象を大きく変える可能性も。不要と感じるエピソードもあるが、全体的にはポップで楽しく観られるのは確か。