岬の兄妹 (2018):映画短評
岬の兄妹 (2018)ライター2人の平均評価: 5
見る者に強烈なパンチを食らわせる問題作
とにかく、監督も役者も含めた作り手たちが、文字通り腹をくくって挑んだことがヒシヒシと伝わってくる。ろくに働き口もない日本の寂れた田舎。リストラされて途方に暮れた兄は、生活のため知的障害を持つ妹に売春をさせる。焙り出されるのは現代の日本人が直面する格差に差別に貧困。みんなが見て見ぬふりをするタブーにズバズバと斬り込みつつ、なりふり構わず地べたを這いつくばって生きていく兄妹の、時として笑えるほどのバイタリティに人間の根源的な強さと逞しさを垣間見せる。日本スゴイ!なんて夢見ている場合じゃねえぞ、さっさと目を覚ませ!このクソみたいな現実をなんとかしろ!と見る者に強烈なパンチを食らわせる作品だ。
ベストワンかも
貧困とセックス。『(秘)色情めす市場』(田中登)や『岬』(中上健次)からの影響は色濃いのだろうか。とはいえパスティーシュ的な陥穽は一切なく、ガチで現代の混沌に向かってくる。新鋭監督・片山慎三(1981年生)はポン・ジュノや山下敦弘の助監督を経て――なんて経歴を参照しなくても、一目瞭然で力量は充分、センスもいい。安い服のリアリティ。『ROMA/ローマ』も立派なのだが、今はこの映画のことばかり考えてしまう。
なんでこんな凄い映画が生まれたんだろう。『万引き家族』の主題、『カメラを止めるな!』の驚き、そこからラインを引っ張りまくっても、このハードコアな大傑作まで辿り着けるかどうかわからない。