浅田家! (2019):映画短評
浅田家! (2019)ライター4人の平均評価: 3.8
これは単なる感動作ではなく、とても手の込んだ作品だと思う
浅田政志の写真集『浅田家』は、セットアップ写真と呼ばれる「演出の施されたスタイル」だ。つまり家族4人があえて作為的に演じあうことで、互いに共有した時空間=特異なファミリーヒストリーのドキュメント性をかえって顕在化させているのである。
で、それは、この映画『浅田家!』の中で家族4人を担った俳優たちのフィクショナルな関係にもオーバーラップしてくる。冒頭で醸し出すミョ〜な違和感が最後に氷解する瞬間、「家族とは、家族を演じあう人々の集合体」であることが明白になるのだ。被災地に舞台を移し、作品のトーンが大きく変わる後半部、菅田将暉の巧演が触媒となり、二宮和也にも新たなスイッチが入るところがスリリング!
ファインダーを覗く優しいまなざしにゾクッ
どこかワイルドさに欠けるなど、当初はミスキャストにも思えた主人公を演じる二宮和也だが、いつの間にキャラクターと同化し、しっくりしている。彼が本来持っている人間力によるところも大きく、後半にファインダーを覗く優しいまなざしにゾクッとしてしまうほどだ。コミカルな「浅田家パート」から一転、3・11以降を描いた「東北パート」に関しては、良くも悪くも中野量太監督の色が出まくり。とはいえ、菅田将暉や渡辺真起子の出過ぎない芝居の効果もあってか、予想していたよりも感動の押しつけになっていない。いろんな意味で、モノ足りなさが肝となっているのが興味深い一作といえる。
ベタなくらいストレートに描かれる家族の愛情と絆
“なりたかった職業”や“やりたかったこと”をコスプレで実現するユニークな家族写真を撮る写真家・浅田政志氏の実話をもとにした作品。前半は天衣無縫な次男坊の浅田氏が家族写真を撮るようになるまでの経緯をほのぼのとしたコメディ・タッチで、後半は東日本大震災で津波に流された写真を持ち主に返すボランティア活動に参加した浅田氏をシリアスな目線で描く二部構成。『湯を沸かすほどの熱い愛』に『長いお別れ』と家族を題材にしてきた中野量太監督だが、今回はこれまでにないほどストレートに“家族の愛情と絆”を描いており、それが時としてベタに感じられる点で賛否はあるだろう。
力み過ぎない家族映画
一人の写真家とその家族の悲喜劇。
主役の二宮和也を筆頭に、妻夫木聡、菅田将暉、黒木華と主演級が並びますが、いちばんいい味を出しているのは両親役の風吹ジュンと平田満でしょう。
よそはよそ、うちはうちを貫き通すこの父母がぶれないので、かなり突飛な話をうまい具合に地に足を付けさせます。
家族を描くというと力みがちで須賀、上手い具合に力が抜けていて、そこがまた笑いを誘います。
過去から現在までのパートと震災後のパートで少し映画のバランスが崩れているような印象もありますが、そこまた味でしょう。全く普通の青年を演じる菅田将暉というのもかえって新鮮でした。