T-34 レジェンド・オブ・ウォー (2018):映画短評
T-34 レジェンド・オブ・ウォー (2018)ライター3人の平均評価: 3.7
『フューリー』に負けない熱血戦争アクション
戦車戦のスリルを刻んだ点では、ロシア版『フューリー』。ナチスと捕虜の戦いと、それに乗じた脱走計画を描いている点では『勝利への脱出』をほうふつさせる。
捕虜となった腕利きの戦車兵のキャラクターがアウトロー風情で、まず目を引く。同じく囚われの戦友たちとの絆や、ナチス側に配置された好敵手の存在もドラマをうまく盛り立てており、クライマックスはついつい前のめりで見てしまった。
製作のN・ミハルコフがどのような絡み方をしたかは不明だが、ハリウッド映画の影響を消化したA・シドロフ監督のエンタメセンスが光り、本国で大ヒットしたのも納得がいく。主演のA・ペトロフをはじめ、役者の面構えもイイ。
戦車の決闘に血湧き肉躍る!
独ソ戦争を題材とした痛快アクションであり、ナチスがソ連軍捕虜を戦車訓練のターゲットにしたという史実にアイデアを得た作品とはいえ、ゲーム感覚が濃厚だ。戦争を知らない若い世代にアピールするロマンスや友情といった要素を盛り込んだだけでなく、愛国心を仰ぐような側面もある。戦争史上最も多数の死亡者が出た戦争なのだが、ソ連軍捕虜の扱いなどにはさほど言及しないのは悲惨さを薄めるためか? T-34やパンツァーといった戦車の機能に関しては知識がないので現実的なのかどうかは不明だが、戦車アクションは画期的でパワフル。「マジですか?」という場面も多々だし、クライマックスでの戦車の決闘には血湧き肉躍った!
戦車内部にいるときの感覚を体感!
戦車内部にいるときの身体感覚が描かれて、戦車が実はただ鉄の板で作られた箱でしかないことが実感できる。それに貢献するのが、音響の演出。弾が戦車に当たると、振動だけでなく、音が内部の空間全体に響いて、耳は聞こえなくなり気が遠くなる。鉄の重さで木製家屋を踏み潰す時の音と振動。そして重さゆえの動きの遅さ。進行だけでなく、砲身も重いので砲身の方向変更ですらジリジリとしか動かない。重くて鈍い鉄の箱なのだ。
その体感描写のリアルさとは対比的に、ドラマは史実に基づきつつも写実性よりエンターテインメント性を重視。何より男たちの戦車への愛を描写。国や思想のためではなく、意地や友のために戦うドラマがいい。