お嬢ちゃん (2018):映画短評
お嬢ちゃん (2018)ライター2人の平均評価: 5
物語が逸れていくところに不穏さが浮かび出る。
とにかく心をざわつかせる映画だ。終始不機嫌な主人公みのりはどうしようもない美少女なのだが、自分の美しさにも、その美しさに勝手に理想を求める男たちにも、自分の美しさを利用しようとする女たちにも絶望している。かといって周囲とのいざこざはなるたけ起こさないものの、身に降りかかった理不尽な行為には毅然と物申す。面白いのは、彼女を描くのとほぼ同等に、みのりという惑星を周回するおよそ無関係に近い男ども女どもの行動もだらだら(に見えるが計算されているのは明らか)描いていることで、世界の摑みかたといい、そのまったく自然な演技といい、二ノ宮隆太郎の確かな演出術を感じさせるのだ。
「あの夏」ならぬ今日も明日も続くのかよ、な夏
『全裸監督』等で俳優評価も高まる異才・二ノ宮隆太郎が初めて監督のみに専念。海のある鎌倉の風景で「無関係」な人たちとも事故のような接触を続けるヒロインみのり役の萩原みのりが強烈。『枝葉のこと』で二ノ宮が演じた彼の自画像と設定は重なるが、まるで異なる一個の肉体がハードボイルドな表情で立ち上がってきた。
今回は『魅力の人間』など監督が本来得意とする「下衆どものチャラい会話」が再び前面化。ある家族の風景から、くだらない面々のスケッチへと移っていく流動的な語りに沿って、「世界」はこういう風に出来ている、という硬質のヴィジョンが貫かれている。伏線回収とは無縁の形で、無駄なシーンが全くない驚異の130分!