オルジャスの白い馬 (2019):映画短評
オルジャスの白い馬 (2019)ライター3人の平均評価: 3.3
米・伊ウエスタンのマッシュアップ in カザフスタン
ジョン・フォードやセルジオ・レオーネのウエスタンにおける映像美を、カザフフスタンの大自然のビジュアルにあてはめたかのような、そんな味がある本作。
悪漢に夫を殺された妻とその息子、訳アリの流れ者といった設定からして、いかにも往年の西部劇風。流れ者にふんした森山未來の無表情で口下手なキャラのせいか、山田洋次の『遥かなる山の呼び声』でも高倉健にも似た武骨さも垣間見え、和的なムードを併せ持つ。
人間ドラマの豊潤さの点ではフォード作品に近いかと思いきや、クライマックスでは強烈なバイオレンスが炸裂。そんな瞬間的レオーネへの転調も面白く、目が離せない。マッシュアップの妙を見た気がする。
抒情と非情を兼ね備えた中央アジア版ノワール
カザフ草原の広大で牧歌的な風景、そこに暮らす貧しくも素朴な人々、淡々と過ぎていく穏やかな時間。まるでアッバス・キアロスタミやバフティヤル・フドイナザーロフの映画みたいだなと思っていたら、突如として頭をもたげる凄惨なバイオレンスに驚かされる。物語の舞台は90年代、ソビエト連邦の崩壊によって社会が最も荒廃していた時期のカザフスタンだ。凶悪犯罪で父親を殺された少年の前に、どこか謎めいた無口な男(森山未來)が現れ、やがて少年と心を通わせるようになる。どことなく『ノーカントリー』を彷彿とさせる、抒情と非情を兼ね備えた中央アジア版ノワール的な雰囲気は面白い。カザフ語のセリフに挑んだ森山未來も好演だ。
森山未來という異邦人
森山未來が単身カザフスタンに渡って作られた作品。
物語の設定やカザフスタンの風景も相まってクラシカル西部劇のような感覚も受けるドラマ作品。
なにより、オルジャスを演じたマディ・メナイダロフ少年をよく見つけてきたなと思いました。
『シグナル100』も公開される竹葉リサ監督が想わぬふり幅を感じさせてくれてい、いい発見でした。
『人類資金』の時もそうですが、森山未來の何とも言えない無国籍感はもっと見ていきたいですね。