少女は夜明けに夢をみる (2016):映画短評
少女は夜明けに夢をみる (2016)ライター2人の平均評価: 4
少女たちが犯罪に走った理由に憤る
イスラム国家に不良少女がいる事実にまず驚くし、なかには殺人や薬物がらみの強盗に手を染めた子もいてかなりハード。かの国に売買春があるとは!? しかし施設に収容されている少女たちは “やさぐれ感”がなく、雪合戦で笑いこけたり、流行歌を歌ったりとあどけない。このギャップに更に驚く。編集的には唐突感を感じるシーンも多いが、監督が少女たちから引き出した痛みや悲しみは見ている側を押しつぶしそうなほど重い。少女が犯罪に走った根本的な理由に憤るしかない。家族との関係などカメラが追えない部分は想像するしかないが、少女たちの今後が気になる終わり方であった。
「疎外」の究極的現実がシンプルに濃縮されている
我々凡夫からすると、いかにも10代然とした少女たちのあどけなさや素朴さと、その口から発せられる壮絶な体験の落差が衝撃としてのし掛かる。「父」や「おじさん」から性暴力を受け、拠り所になるはずの「母」はむしろ彼らに取り込まれてしまうという共通の構図が語られる。彼女達が犯罪者と呼ばれるなら、それはまるで『ジョーカー』ではないか。
容赦ないジャングルと化した社会や家庭に対し、このイランの更生施設では皆「よく話す」。似た境遇を抱えた仲間たちだけでなく監督にも。彼女たちの率直さを引き出す傾聴の姿勢が“不幸の陳列”を超える。そのぶん施設の「外」の気配がした時、怯えて言葉を失う様が痛ましい。観るべき一本だ。