ダンサー そして私たちは踊った (2019):映画短評
ダンサー そして私たちは踊った (2019)ライター2人の平均評価: 4
あなたがあなたらしくあることに他人の許可など必要ない
「男は男らしく、女は女らしく」という前時代的な価値観が今も根強い国ジョージア(旧グルジア)を舞台に、ことさら伝統を重んじる国立舞踏団に所属する若きダンサーが、初めて同性に恋することで隠し続けてきた「自分らしさ」を解き放っていく。あなたがあなたらしくあることに他人の許可など必要ないし、誰もそれを抑えつけることなど出来ないというメッセージは、きっと大勢の励みとなるはず。そして、マイノリティがマジョリティに理解を求めることも必要だが、しかしそれ以上にマジョリティがマイノリティを理解しようと努めることが大事だということも教えてくれる。主演のレヴァン・ゲルバヒアニも素晴らしくチャーミングで魅力的だ。
ダンスのエネルギーと繊細な青春映画の心地よいブレンド
ジョージア(グルジア)が舞台というだけで珍しいうえ、「ジョージア舞踊」の、コサックとバレエを足したような激しくダイナミックな動きが、本能を刺激する。ダンス映画としての強烈なエネルギーと、主人公が同性への想いを受け入れていく柔らかな曲線が交互に伝わり、青春ムービーとして入り込みやすい作り。キリスト教社会のジョージアでは反発もあったようだが、監督はスウェーデン人で、ABBAの曲も使われ、『千と千尋』のカオナシの絵が出てくるなど、普遍性が意識された印象。主人公メラブを演じるレヴァン・ゲルバヒアニはプロのダンサーなので演技には荒削りな部分もあるが、時折「バレエの王子様」を感じさせる神秘的ムードが漂う。