死霊魂 (2018):映画短評
死霊魂 (2018)ライター2人の平均評価: 5
ギンギンで目を見開かずにいられない8時間26分
主題が文革に先駆けた黒歴史――反右派闘争で、『無言歌』を挟み丹念に撮り溜めていた12年間の集積がついに開陳される。最晩年と言っていい時期を迎えたサバイバーたちの証言をひたすら傾聴する&対話するスタイルは、ワン・ビンの傑作群の中でも極めて“ダイレクト”で、剥き出しの迫力に満ちている。
唯物論だから「霊魂NG」のマオイズムの国家体制に真っ向から逆らってのタイトルから勇ましい。50年~60年前の凄惨な事実=記憶が「現在」の口から再生され、砂に埋もれた人骨が「忘れるなよ」とばかりに顕われる歴史のイメージが不穏に響き続ける。『赤い闇』が描いたホロドモール/スターリニズムと同じ闇がせり上がるのも必然。
執念と怒りのドキュメンタリー
監督は度々、中国の反右派闘争をテーマに描く。創作意欲を掻き立てるのは何か? 監督の手持ちカメラによる映像が物語る。再教育収容所があったゴビ砂漠に、風雨にさらされ剥き出しになった人骨の夥しい数。劣悪な環境で病死や餓死した人たちだ。歴史的には彼らの名誉はのちに回復されたことになっているが、それがいかに気休めでしかないか。臭い物に蓋をし続けてきた権力者の横暴を丹念な取材で詳らかにする。監督の初長編劇映画『無言歌』を見た人なら、史実を忠実に再現した内容であることにも本作で気づくだろう。確かに8時間越えの上映時間は鑑賞に気合が必要だ。しかし世界が右翼化する中、監督からの警鐘と思えば時間を忘れること必至。