COMPLY+-ANCE コンプライアンス (2019):映画短評
COMPLY+-ANCE コンプライアンス (2019)ライター2人の平均評価: 3
紛れもなくオリジナル
齊藤工監督が遂に作品を通して心の奥底にある闇や怒りを創造のエネルギーに変える術を見いだしたようだ。オムニバス形式で2人の気鋭監督を起用したのは、この逸材を埋れさせなるなという日本映画界への提言だろう。そして自身の監督作で、とりわけスポンサーへの配慮で役者が取材にまともに答える事が出来ない窮屈さがある中、表現の自由なんてあったもんじゃないというエンタメ界の現状をアイロニーを込めて表現した。まさに齊藤監督でしか描けない世界。テーマを掘り下げれば『パラサイト』級の、ミニマムな視点から世相を反映する傑作が生まれるのではないかという期待すら抱く。ただ如何せん”撮って出し”の乱雑さが。そこが惜しい。
三者三様の才能が“あの問題”に切り込む
先陣を切るのは、自主映画の撮影後に陥りやすい女優とのトラブルを描く岩切一空監督作。中井友望を可愛く撮ることに命を懸けた、お得意のフェイクドキュメンタリーであり、現場における監督の圧を感じる演出も垣間見れる怪作である。トリは、若手女優のインタビュー時にあるかもしれない状況を、『blank13』のコント風味で描いた齊藤工監督作。どちらも監督の実体験を元に、独自の作風でコンプライアンスが生まれる瞬間を切り取り、なかなか興味深い。その2本を繋ぐのが、飯塚貴士監督がバイオレンス・ヒーローとヴィランの関係性を描いた人形アニメ。これがテーマを明確にするとともに、絶妙なアクセントになっている。