とんかつDJアゲ太郎 (2020):映画短評
とんかつDJアゲ太郎 (2020)ライター2人の平均評価: 4
クラバーも必見のアゲアゲな青春コメディ
原作コミックの予備知識なしで臨んだのだが、とにかくクラブ・シーンの描写が‟ちゃんとしている“ことに感心。とんかつもDJも‟アゲる”技が命!ということで、とんかつ屋の跡取り息子がノリで挑んだDJ活動を通じて大切なことを学ぶというウソみたいなストーリーも、肝心要の背景描写に真実味があればこそ説得力が生まれる。その昔クラブ・オーガナイザー兼DJの端くれだった筆者としては、クラブ界隈あるある裏事情の連続にニヤニヤしっぱなし。大いなる勘違いと挫折を乗り越えていく主人公の成長譚も素直に楽しい。と同時に、世界に冠たる日本のクラブ・シーンが、風営法などの影響で往時の輝きを失いつつある事実も胸によぎる。
グルーヴ感はもちろん、脚色の巧さも光る!
“センスの塊”二宮健監督にとって、ワーナー&フジテレビという大舞台にして、まさに適材適所の企画! これまで多くの(遊んでない)監督が失敗してきたクラブシーンも、渋谷WOMBを使ってしっかり魅せてくれる。DJとしてのテクニック云々以前に、まずはYou Tuberとして注目される今っぽさのほか、登場キャラクターを整理し、大失態による挫折から始まるスポ根展開など、脚色の巧さも光る。「とんかつを食べ歩いて愛する会」の登場など、ギャグシーンでは演出的にもっとフッ切ってほしかった感もあるが、原作へのリスペクトを強く感じる映画化。今度は三枚目キャラを演じる北村匠海の芸達者ぷりは、ここでも健在だ。