ブリット=マリーの幸せなひとりだち (2019):映画短評
ブリット=マリーの幸せなひとりだち (2019)ライター2人の平均評価: 3.5
新たな人生を夢見る中高年にエールを送る
人生100年時代、還暦過ぎてもやり直しはきくということを語る、心温まる作品。日本でも熟年離婚が増えている今、ずっと専業主婦だった主人公が夫の不倫を知ったことでブチ切れ、思いもしなかった行動に出るというこの話に、共感する人は多いのでは。ストーリー自体は、よくあるパターン。知らない街に着くやいなや早速想いを寄せてくれる男性が現れるなど、ちょっと都合がよすぎるかなという部分もある。しかし、中高年向きのファンタジーだと考えれば気にならないし、何より、この年齢の普通の女性を主人公にしたということ自体が新鮮だ。内に多くを抱えるその女性を、ペルニラ・アウグストが名演する。
万能な重曹でシミは消せても、孤独感は消せない
夫の愛人に直面する事態となって家を出た専業主婦ブリット=マリーの社会人デビューと成長がユーモラスに綴られる。「たいていの問題は重曹で解決する」家庭という小さな世界に閉じ込もっていたヒロインが足を踏み出した先で出会った人々に背中を押されて、歩みをさらに進めていく姿が微笑ましい。サッカーに夢を託す移民少女との関係性に心打たれ、やもめ男との恋めいた関係にもにんまり。夫がいても孤独だった女性が独りになったことで本来の自分に気づき、自信を取り戻すのは本当に痛快だ。スウェーデンの名女優P・アウグストが徐々に輝き始める中年女性をリアルに演じていて、後半では「同じ女性?」と思わせるほど柔和で美しく見える。