シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち (2019):映画短評
シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち (2019)ライター4人の平均評価: 3.5
人生には困難が付きものだからこそ明るく前向きに!
スランプに陥った苛立ちからホモフォビア発言をした有名な水泳選手が、その罰としてゲイスポーツ界で最弱と呼ばれる水球チームのコーチを務めなければならなくなる。フランスに実在するゲイ水球チームがモデル。楽しむことよりも勝負にこだわり過ぎる偏屈な男が、勝負を忘れて楽しみ過ぎてしまう陽気な連中との交流を通じて自らの殻を破っていくというわけだ。その過程で、一見したところ能天気に思えるゲイたちの抱えた心の傷や哀しみが浮き彫りにされ、人生には困難が付きものだからこそ明るく前向きに楽しむべきだと教えてくれる。それにしても、サブリナの’80年代ディスコ「ボーイズ」がこんな爽やかなメッセージ・ソングになるとは!
オリンピック前にスポ根コメディで胸アツ
夏季五輪の合間に行われる同性愛者を対象としたスポーツ大会、その名もゲイゲームズ! 同大会出場を目指す水球チームと監督の友情と成長を描くスポ根ものは、考えさせられる快作だ。主人公がゲイの水球チーム監督に就任するのがアンチ同性愛者発言への懲戒という点はモヤモヤするが、個性豊かなメンバーの影響で考え方を変えていく展開にはやはり「そうだ」と膝を打つ。勝ちよりも映えにこだわる選手の描写やモチベーションの差など笑える部分もある。娯楽性を追求しながらも、LGBTQ+が置かれた状況などを丁寧に描いていて、メッセージ性も高い。見終わった時、香港で行われる2022ゲイゲームのTV放映を期待した。無理?
スポーツ大会は、やはりこういう盛り上がりを目にしたい!
ゲイゲームズ出場をめざす水球チームの面々は、個性の描き方も映画らしく、キャストたちも楽しそうに演じていることが素直に伝わる。それぞれの私生活、悩みも、サラリとではあるが真摯に見つめる作り手側の良心が満ちていて、心地よい風が流れている印象。
ゲームのシーンは、勝敗どうこう以前に、観客の盛り上がりも含めて、スポーツ大会の魅力が最高潮。2021年の東京五輪でも、こんな風景を見たかった…と寂しくなるが。
意見が合わないコーチとの関係や、スポ根らしい変化・団結、そして重要な「笑い」の部分も、「愉快で愛しい」というサブタイトルが示すように全体には予想どおりだけれど、その予想どおりの感覚が気持ちいい一作。
イカレてる!? そこが愛しい!
これはもうキャラクターの魅力に尽きる。邦題どおりの“愉快”な連中。LGBTというテーマを踏まえてはいるものの声高にそれを訴えず、ノンケの見逃しがちな、彼らの目線の先を浮かび上がらせる。
コメディではあるが、キャラのイカレ具合で笑えるのがミソ。テンションを上げてはパンツを脱ぐ奔放さはもちろん、ジョークさえも各キャラの性格に根差しているのがイイ。
“ひとりで勝つより、仲間と負ける方がいい”――映画の核心でもあるこのセリフは賛否が分かれるところだが、少なくともドラマはこのテーマからブレがなく、共感を引き寄せる。そういう意味では、これまた邦題どおり、“愛しい”連中の物語だ。