誰がハマーショルドを殺したか (2019):映画短評
誰がハマーショルドを殺したか (2019)ライター2人の平均評価: 4.5
ヤバいモノを釣り上げたジャーナリストの執念に唸る
元国連総長ハマーショルドの事故死の真相を探る本ドキュメンタリー。監督が秘書に調査結果をタイプさせつつ進行するという点が面白い。観客も秘書の視点で状況を整理できる、という寸法だ。
話を面白くするのは、なんといっても南アフリカに実在したらしい極秘組織サイマーの存在。この組織の実態が判明すればするほど怪しすぎて危険すぎて、目が離せなくなる。
監督は調査結果に対する混乱の胸中を明かすが、無理もない。ハマーショルド事件よりも仰天の案件が持ち上がり、鯛を釣ろうとしたら巨大鮫が釣れてしまったような。その衝撃もさることながら、サイマーに食らいついたジャーナリズムの執念に頭の下がる思いを禁じ得ない。
で、事実はいったい何だったの?
1961年に他界したハマーショルド元国連総長の死の謎を追うドキュメンタリーで、フーダニット&ホワイダニットが基本。M・ブリュガー監督は暗殺前提だ。ただし謎が謎を生み続けるので、監督が秘書二人とロールプレイもどきをしながらこんがらがる自体を整理する設定が演劇的でユニークだ。コミカルですらある。暗殺事件の背景を探るうちに南アの白人至上主義が絡む謎の組織サイマーの異常な作戦にぶち当たるし、MI6やCIAの関与を匂わせる関係者や証言そのものが果てしなく胡散臭かったりで「事実はどこに?」という気分になる。取材に7年間かけた監督と相棒の根気強さを評価したい。奇想天外な話が続き、何度でも見たくなる絶品なり。