哀愁しんでれら (2021):映画短評
哀愁しんでれら (2021)ライター2人の平均評価: 4
大災難コメディからサイコホラーへ転調
怪作『かしこい狗は、吠えずに笑う』から約8年、待ちに待った渡部亮平監督の商業デビュー作は、まさに名刺代わりのオリジナル・サイコホラー。前作の女友だちから家族に関係性は変われど、行き過ぎた想いから始まる幸せな日常からの“転調”は変わらず。ただ、前作のように突き落とすのではなく、田中圭とCOCO演じるモンスター父娘が、ジワジワと土屋太鳳演じるヒロインのメンタルを追い詰めていく。その歪み方は、とにかく不穏で不気味。シネマスコープで展開される徹底した画作りに加え、ポン・ジュノや中島哲也監督作ばりに後々まで引きずるラストのカタルシスなど、新人離れした監督の才能は見事に開花している。
和製ダークファンタジーの誕生
こういうダークファンタジー、ブラックなテイストの映画が日本映画の中から飛び出してくれたのは嬉しい出来事です。そこに土屋太鳳、田中圭というネームバリューのあるスター俳優が出演してくれたことも嬉しいです。
序盤のスラップステッィク・コメディ調から始まり恐怖や悲劇と喜劇は紙一重だと言うことを改めて教えてくれます。正義や幸せの在り方を改めて考えさせてくれます。土屋太鳳の序盤の純朴さと後半の妖艶さのギャップが素晴らしく、魅了されます。土屋、田中の二人はパブリックイメージもあってか陽性のキャラクターを演じることが多いですが、こういう暗い情念に満ち満ちた役ももっと見たいところです。